前回に引き続き、今回は、『薬局薬剤師のコーチング』のシリーズの2回目です。
今回は、コーチングを行なっていく上での指導のポイントと3つのスキルについて紹介していきます。
ここで紹介する3つのスキルを使うことで、誰でもコーチングのスキルを身につけることができます。
前回の復習
前回は、『そもそもコーチングとは何か?』について深掘りして紹介してきました。
コーチングは、相手に気づきを与えて、自発行動を起こすためのコミュニケーション技法であると解説してきました。
そして他にも4つの指導法のメリット・デメリットについても紹介してきました。
そこで今回は、コーチングをさらに深掘りし、
コーチングを行う際におさえておくべき重要なポイントと3つのスキルについて具体的に解説していきます。
コーチングを行う際の重要ポイント
結論から申しますと、
コーチングを行う上で重要となってくるポイントは、『相手にいかに気づきを与えるか』です。
これはコーチングを行なっていく上での重要なプロセスと言ってよいでしょう。
なぜなら、相手に気づきを与えることできると主に下記の3つの効果があるからです。
- 相手に言われることよりも、自分が気付いたことは素直に受け入れられる
- 自分の考えが整理され、新しい発想やアイデアが出てくる
- 自分で気づいたことは、自発的に実行に移せる
コーチングでは、気づきを引き出すために、この後に紹介する3つのスキルを活用し、相手が自発的に行動するようサポートします。
つまり、気づきを促すことがコーチングにおいて欠かせない重要なプロセスとなってきます。
コーチングに必要な3つのスキル
ではここからはコーチングを上手く行っていくための3つのスキルについて解説していきます。
- 傾聴のスキル
- 質問のスキル
- 承認のスキル
では1つずつ具体的に解説していきます。
傾聴のスキル
まず1つ目は傾聴のスキルです。
コーチングでは相手との対話を通じて行なっていきますが、対話の前提として、お互いに信頼関係を構築しておくことが非常に重要です。
相手が心を開いて初めて、コーチングが本格的に始まります。
この信頼関係を構築するために有効なのが『傾聴のスキル』です。
相手の話をしっかりと聞き、理解しようとする姿勢を示すことで、相手は安心して自分の思いや考えを話しやすくなります。
ところで、
メラビアンの法則ってご存知でしょうか?
人と人とのコミュニケーションで感情や態度の伝わる割合を示すもので、下記の通りです。
- 言語情報(話の内容)7%
- 聴覚情報(声のトーンや話し方)38%
- 視覚情報(見た目や表情)55%
つまり、このメラビアンの法則からも分かるように、コミュニケーションで感情や態度を伝える際には、
言葉そのものよりも声のトーンやボディランゲージといった非言語的な要素(聴覚情報・視覚情報)が大きな影響を与えるということを知っておく必要があります。
こういった非言語的な要素(受容的態度)については、このサイト内の記事で詳しく紹介しているの参考にしてみてください。
こういった非言語のコミュニケーションを意識しながら、傾聴のスキルを使って相手の話を聴いていきます。
傾聴のスキルに関しても、このサイト内の記事で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。
ここで紹介した、受容的態度と傾聴のスキルを使いながら、相手との信頼関係を気づくことができると対話が成立し、コーチングの準備が整います。
質問のスキル
2つ目は質問のスキルです。
第1回目の内容でお話しした通り、コーチングでは『相手の持つ能力を引き出すこと』がとても重要です。
そのためには、こちら側が質問のスキルを身につけなければなりません。
質問のスキルは相手の視野を広げ、新しい気づきを得るために重要です。
質問の目的は、相手が新しい視点を持てるように促すことです。
そのために、視野を広げるための質問のポイント(目的)を以下に何個か紹介します。
- 問題点をはっきりさせる
- 目的を設定する
- 考えを整理する
- アイデアを出させる
- 物事を具体的にする
- モチベーションを上げる
- 視点を変える
- 価値観を知る
- 他の選択肢を出させる
- 気づき・発見を促す
こういったことを常に意識して相手に質問をしていきましょう。
そして質問の着眼点は、下図のように、常に来たるべき未来に目を向けながら話していくようにしましょう。
承認のスキル
最後の3つ目は承認のスキルです。
承認のスキルって聞いたことがない…
そうですね。
多くの方は聞いたことがないかもしれませんが、承認には、下記のように大きく3つあると言われています。
- 存在承認
相手の存在に気付いていることを伝える
(例)「本当に助かるよ」「いてくれて心強いよ」「今日もありがとう」 - 成長承認
成長している点を的確に伝える
(例)「素晴らしかったよ」「さすがだね」「見事にやり遂げたね」 - 成果承認
成果を伝える(褒める)
(例)「前より確実に上達してるね」「成長が目に見えるよ」「着実に良くなってるね」
これらの3つの承認を組み合わせることで、相手は『自分には存在価値がある』『自分は成果を出せる』『自分は成長している』と感じ、自信と安心感が増します。
その結果、相手は対話に前向きになり、目標達成に向けた行動を自発的に取るようになってきます。
つまり、承認を通じて相手はモチベーションが高まり、自発的な行動が促され、コーチングの効果が最大化されます。
そこで、ちょっとこんな訓練をしてみましょう。
承認の言葉は、こちらが意識して使っていかないと、なかなか自然に出てきません。
承認の言葉は本当に無数にありますが、代表的なものを列挙すると下記のようなものがあります。
もちろん他にもまだまだありますが、承認の言葉の中でも赤文字と黒文字の言葉があるのにお気づきでしょうか?
この2つの違いは、
赤文字は主語を『私』にしていて、黒文字は主語を『あなた』にしている表現方法の違いです。
一般的にこれは、『Iメッセージ』・『Youメッセージ』と言われる伝え方で、両方を比較すると、相手に伝わる印象が変わってきます。
では、『Iメッセージ』と『Youメッセージ』比較してみましょう。
- 定義:自分の感情や考えを『私』を主語にして表現する方法
- 目的: 自分の気持ちや意図を率直に伝え、相手に対して非攻撃的に意見を述べるための手段
- 例:「力を貸してもらえると、私は助かります」「そう言われて,私はショックです」
- 特徴:自分の感情や考えを伝えるため、相手に責任を負わせることなく、建設的なコミュニケーションを促します
- 定義:『相手』を主語にして、その行動や態度を指摘する表現方法
- 目的: 相手の行動に対して意見や批判を述べる手段として使われます
- 例:「あなたはいつも遅れて来る」「あなたのその言い方は良くない」
- 特徴:相手の行動を指摘するため、相手に責任を感じさせやすく、相手が防御的になりがち
もしあなたが効果的なコミュニケーションを目指すなら、Iメッセージを活用することで、相手との信頼関係を保ちつつ、課題に対処していきましょう。
コーチングでは、Iメッセージを積極的に使っていきましょう。
この『Iメッセージ』に代表されるさわやかな自己表現・伝え方については、このサイト内で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。
まとめ
今回は、薬局薬剤師のコーチングの2回目、コーチングの指導の際の重要ポイント・3つのスキルについて紹介してきました。
コーチングを行う際うには、『相手にいかに気づきを与えるか』が非常に重要になってきます。
そのためにもここで紹介した3つのスキル(傾聴・質問・承認)を自分のものにして、コーチング力をアップさせていきましょう。
次回は、薬局薬剤師のコーチングの最終回の3回目、現場での代表的なコーチングの実践例について紹介していきます。
NEXT > 薬局薬剤師のコーチング③|実践編(現場での3つの事例)
この記事は以下のような方におすすめです。