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管理薬剤師向けマネジメント研修⑥|薬局の数字①(計数管理と財務三表)

うちの薬局ってどれくらいの利益出てるんだろう…?

うちの薬局経営、ちゃんと大丈夫かな…?

こんなことを思ったこと、ありませんか?

経営の話って、どうしても難しそうに感じるし、現場の仕事には関係ないように思えるかもしれません。

でも実は、薬局の経営がうまくいかないと、私たち薬剤師が一番困るんです。

たとえば、薬局の利益がギリギリだと、スタッフを増やすことができません。

そうなると、忙しくて人手が足りず、業務が回らなくなる可能性もあります。

それだけじゃなくて、ボーナスが減ったり、最悪の場合、給与が下がることだってあり得ます。

『経営のことは経営者や本部が考えることだし、私は関係ない』と思うかもしれませんが、最低限の数字の知識を持っていれば、現場での判断にも役立ちますし、管理薬剤師としての視野も広がります。

そこで、今回は2回シリーズで『薬局の数字を理解するための計数管理』についてお話ししていきます。

まず第1回目では、計数管理の基本についてお話しします。

『計数管理って何?』『どうして必要なの?』という疑問を、わかりやすく解説します。

さらに、計数管理の基礎となる財務諸表の中でも特に大事な『損益計算書(PL)』『貸借対照表(BS)』『キャッシュフロー計算書(CS)』の3つについても、簡単に説明します。

『経営はちょっと苦手…』という方でも大丈夫。

必要なポイントだけをシンプルにまとめてお伝えしますので、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

数字の見方を少しでも理解できると、経営者と話すときも『何となく』でなく、ちゃんと意図を持って話せるようになります。

きっと薬局の運営にも役立つはずです。

それでは、計数管理の基本から見ていきましょう。

計数管理はなぜ必要か?

薬局が安定して成長していくためには、やっぱりお金が必要です。

例えば、レセコンや調剤機器といった設備投資、スタッフの人件費、患者サービスの向上にかかる費用など、さまざまなコストがかかります。

薬局を運営するためには、これらの費用をまかなえるだけの利益が必要なんです。

私たち薬剤師は、患者さんが処方箋を持ってきてくれるおかげで売上が上がり、その売上が薬局の運営を支えるお金になります。

つまり、薬局が利益をしっかり上げていかないと、安定した運営ができないということです。

だからこそ、薬局がどれだけ効率よく運営されているかを把握することが大事なんです。

そのために必要なのが、『計数管理』なんですね。

どんな会社でも、基本的にはお金を集めて、そこから必要な投資をして、最終的に利益を上げるという流れがあります。

薬局でも、どれだけお金を使って、どれだけお金が入ってきているのかを整理したものが、財務諸表です。

財務諸表は、薬局の運営状態を『見える化』しているもので、経営者はこれを見ながら日々の運営を進めています。

でも、財務諸表って経営者だけのものじゃありません。

実は私たち薬剤師の業務とも深く関わっているんです。

財務諸表を完璧に書ける必要はありませんが、せめて読むくらいの理解を持っておくことは大切です。

これから、財務諸表についてもう少し詳しくお話ししていきますね。

財務諸表について

財務諸表って、簡単に言うと会社のお金の流れや経営状態をまとめた書類のことです。

よく『決算書』とも呼ばれています。

この書類は、会社がどんな状態で運営されているかを外部に伝えるために使います。

具体的には、株主、銀行、取引先に『うちの会社はこんな感じで経営していますよ』と示すためのものです。

決算書にはいろいろな種類がありますが、主に『損益計算書』『貸借対照表』『キャッシュフロー計算書』『株主資本等変動計算書』『個別注記表』の5つがあります。

その中でも、『損益計算書』『貸借対照表』『キャッシュフロー計算書』の3つは『財務三表』と呼ばれて、特に重要だとされています。

今回は、この『財務三表』について簡単に説明しますね。

損益計算書(PL)

出典:イラストAC(損益計算書)

簡単に言うと、損益計算書は『この薬局、儲かってる?』を数字で示したものです。

でも、管理薬剤師としては、会計の専門家じゃないので、細かく全てを理解する必要はありません。

ただ、押さえておくべきポイントはあります。

それは『5つの利益』と、その間に出てくる項目くらいです。

では、その『5つの利益』を見てみましょう。

5つの利益の図

①売上総利益(粗利)

売上から、仕入れた薬の原価を引いた利益。

いわゆる『粗利』と呼ばれるものです。

②営業利益

粗利から、人件費や家賃、広告費などの『販売費及び一般管理費(販管費)』を引いた利益。

つまり、本業でどれだけ儲かっているかを示す利益です。

③経常利益

営業利益に、本業以外のお金の動き(例えば、利息収入や支払い利息)を加減した利益。

ざっくり言うと、『日常の経営活動の結果、どれだけ儲かっているか?』を示しています。

④税引前当期純利益

経常利益から、災害損失や補助金収入など、突発的な収入や損失を調整したものです。

この数字で『薬局全体でどのくらい稼いだか』が分かります。

⑤当期純利益

最終的に、税金を引いた後に残る利益。

薬局経営の場合、これはオーナーの最終的な儲けになります。

薬局の経営が順調かどうかを見極めるには、この5つの利益をチェックすればOKです。

『どこで利益が減ってるんだろう?』と順番に見ていけば、問題のある部分が見えてきます。

例えば、粗利が少ないなら仕入れの見直しが必要かもしれませんし、営業利益が伸び悩んでいれば、人件費や家賃、その他のコストに原因があるかもしれません。

『うちの薬局、どこでつまずいてる?』と考えながら見ることで、経営改善のヒントが得られるはずです。

次は貸借対照表(BS)について見ていきましょう。

貸借対照表(BS)

出典:イラストAC(貸借対照表)

貸借対照表(BS)は簡単に言うと、『この薬局、どこからお金を集めて、どこに使ってるのか』が分かる表です。

経営って大まかに言うと、『お金を集める→何かに投資する→売上(利益)を出す』という流れで成り立っていますよね。

貸借対照表(BS)は、まさにこの『お金をどう集めたか』と『そのお金を何に使っているか』をまとめたものです。

損益計算書(PL)は管理薬剤師もある程度理解しておいた方がいい(読める程度)ですが、貸借対照表に関しては、エリア長やオーナーでない限り、細かく理解する必要はありません。

『あ、そんな感じなんですね』とざっくりと押さえておけばOKです。

とはいえ、最低限ここだけは押さえておくと良いポイントがあります。

ポイント

貸借対照表は『左側』と『右側』に分かれています。

  • 左側(資産の部)→ お金を何に使っているか
  • 右側(負債の部+純資産の部)→ お金をどこから調達してきたか

貸借対照表(BS)の左右を見れば、薬局のお金の流れがざっくり分かります。

まとめると、

損益計算書(PL)は『どうやって利益を出しているか』を見るもので、貸借対照表(BS)は『そのお金がどこから来て、どこに行っているか』を見るものです。

この2つをセットで見ていくことで、薬局の経営状況がよりはっきりと見えてきます。

最後にキャッシュフロー計算書(CS)について見ていきましょう。

キャッシュフロー計算書(CS)

キャッシュフロー計算書(CS)とは、簡単に言うと、『お金の出入りをまとめた表』です。

イメージとしては、会社の家計簿みたいなものですね。

損益計算書(PL)では利益が出ているかが分かるし、貸借対照表(BS)を見ればお金をどこから集めて、何に使っているかが分かります。

でも、この2つだけでは、『実際に手元にお金がどれくらいあるか?』は分かりません。

オーナーからすると、『利益は出てるはずなのに、なんでお金が足りないんだ?』と思うことがしばしばあります。

それは、売上があっても、まだ入金されていなかったり、知らないうちにお金が出ていっていたりすると、『黒字のはずなのに現金がない…』という状態になるんです。

でも、キャッシュフロー計算書を見れば、その理由が一目瞭然。

キャッシュフロー計算書では、お金の流れを『営業』『投資』『財務』の3つに分けて考えます。

順番に説明しますね。

営業キャッシュフロー

薬局の本業でお金がどれくらい入ってきて、どれくらい出ていったか を示す指標です。

ここがプラスなら、本業でしっかり利益が出ていて、薬局の運営も順調 ということ。

でも、ここがマイナスだと、『売上はあっても実際のキャッシュが足りない…』という状態になるので要注意です。

投資キャッシュフロー

薬局の将来に向けて使ったお金の流れ を示すのが、この『投資キャッシュフロー』です。

たとえば、店舗の改装、新しいシステムの導入、機械の購入などがここに含まれます。

ここがマイナスでも、成長のための投資なら問題なし。

ただ、無駄な支出が増えていないかはしっかりチェックしておきましょう。

財務キャッシュフロー

借入や返済のお金の流れ を示すのが、この『財務キャッシュフロー』です。

たとえば、銀行からの借入や返済、オーナーが出した資金などがここに含まれます。

ここがマイナスなら、借金をしっかり返している証拠。

でも、新たな借入が増えすぎていないかは要チェックです。

返済のペースが無理のない範囲かどうか、定期的に見直しておくと安心ですね。

キャッシュフロー計算書は、『お金がちゃんと回ってるか?』をチェックするための表です。

難しく考えず、『お金がどこから入って、どこに出てるのか?』をざっくりでも把握しておくと、薬局の経営がグッと分かりやすくなります。

まとめ

今回は薬局の計数管理の重要性と、財務三表について紹介しました。

薬局の経営状況をしっかり把握することは、管理薬剤師として欠かせないスキルの一つです。

損益計算書(PL)を理解すると、薬局の利益構造が見えてきますし、貸借対照表(BS)を読むことで資金の流れがよくわかります。

さらに、キャッシュフロー計算書(CS)を確認することで、実際の資金繰りの状況も明確になります。

数字を上手に使うことで、現場での判断がしやすくなり、経営層とのコミュニケーションもスムーズに進むようになります。

これが結果的に、より良い薬局運営に繋がっていきます。

次回は、薬局の現場で実際に計数管理をどう活用するか、もっと具体的な方法をお伝えします。

ぜひお楽しみに!