
忙しすぎて、患者さんとのやり取りに十分な時間を割けない…
こんな思いを抱えている薬剤師の方、少なくないのではないでしょうか?
普段、何気なく口にする言葉が、実は私たちの心や周りの雰囲気に大きな影響を与えていることがあります。
今回は、その『言葉の力』に焦点を当て、私たちの仕事や患者さんとの関係にどんな影響を与えるのか、一緒に考えていきましょう。
目次
言葉の使い方が生むポジティブとネガティブの差
薬局内での会話を聞いていると、『壁にぶつかって困っている』『慣れないことに直面している』といった悩みが話題に上ることがよくあります。
そんなとき、よく耳にするフレーズとして、次のようなものがあります。
- 「いや〜、難しいですよね」
- 「これ、大変だと思いますよ〜」
- 「忙しいですよね」
- 「もう、疲れちゃいますよね」
一方で、同じ状況に直面しても、別のタイプの人は次のような言葉を使う人もいます。
- 「いや〜、これ、できるようになったら面白いですね」
- 「やりがいがありますよね」
- 「楽しいですね」
- 「忙しいけど充実しています」
- 「疲れることもあるけど、楽しんでますね」
こんな風に、前向きな言葉を自然に使う人もいれば、前者のように後ろ向きな言葉を選びがちな人もいます。
例えば、同じ旅行に行ったとしても、
『楽しかった!』と言って帰ってくる人
『疲れたな〜』と言って帰ってくる人
このように、ネガティブな面に目を向けやすい人と、ポジティブな面を重視する人がいます。
普段の会話の中で、自分がどちらの言葉を使っているか、どんな印象を与えているか、ちょっと振り返ってみましょう。
あなたの言葉が、赤字経営なのか黒字経営なのか、気づくことができるかもしれません。
職場の雰囲気を変える言葉の力
もし自分の職場で『赤字』の言葉がほとんど使われなくなり、7割、8割が『黒字』の話になったとしたら、どんな職場になると思いますか?
ちょっと想像してみてください。
そして、その未来を予測してみましょう。
実は、マイナス思考に寄りがちの人がこういう話をすると、よくこんな返事が返ってきます。
- 「そんな事を言うと、みんなが疲れちゃいそうですよね」
- 「そんな風に言うと、ストレスが溜まりそうですよね」
- 「前向き発言ばかりだと、ガス抜きできなくなっちゃいますよね」
…と、どうしても後ろ向きに考えがちです。
一方で、前向きな人はこんな風に言うかもしれません。
- 「いや〜、面白くなりそうですね」
- 「いや〜、これからどうなるのか楽しみですね」
- 「やりがいがありそうで、ワクワクしますね」
実は、これがその人の感性なんですね。
自分の感性は意外と気づきにくいもので、こうして改めて振り返る機会がないとなかなか意識することができません。
では、少し考えてみましょう。
今の自分の職場を思い浮かべてください。
例えば、『どんな職場で働いているの?』と聞かれたら、あなたはどんな答えをしますか?
前向きな人は、

うちの店舗は本当に面白いんですよ。
こうこうこれで…これからも前向きに仕事を続けたいと思っています…
…と話すかもしれません。
反対に、後ろ向きの傾向の人は、

まあ、外から見ると薬局って良さそうな職場に見えるかもしれないけど、実際は大変なんです…
中で働く人達の人間関係とかもあって…
…とネガティブな話を続けることが多いです。
このように、後ろ向きな言葉を使う人は、周囲を自分と同じように引き込んでしまうことがよくあります。
例えば、『あなたも大変だね』と言われると、むしろ嬉しく感じてしまうことがあるんですね。
自分の感性が職場にどういう影響を与えているかを一度振り返って考えてみましょう。
真のかかりつけ薬剤師になるための研修ワーク
では、ここで少し立ち止まり、『真のかかりつけ薬剤師』として、どのように患者さんに元気を与える医療を提供できるかを考えてみましょう。
これから、そのための具体的なワークを行っていきますので、研修を受けているつもりで取り組んでみてください。
シナリオ
あなたは薬剤師として、ある日、患者さんからこんな質問を受けます。

では、あなた自身ならどのように答えますか?
次に進む前に、以下のワークを通じて、患者さんに元気を与える医療のあり方について一緒に考えてみましょう。
【ワーク①】教科書通りの答えを考えてみよう
まずは、一般的な医療従事者がどのように答えるかを考えてみましょう。
例えば、教科書通りに病気の側面を強調すると、こんな回答になるかもしれません。

糖尿病は初期には自覚症状がほとんどありませんが、放置すると脳卒中や心筋梗塞など、深刻な病気を引き起こすことがあります…

糖尿病が進行すると、失明や透析、壊疽などの深刻な合併症を引き起こし、生活の質を大きく損なうことになります…
確かに、これは正しい回答です。
しかし、このようなことを言われると、患者さんは不安を感じるかもしれません。
正確な情報を伝えることは大切ですが、その一方で、患者さんの不安を和らげる方法を考えることも非常に重要です。
【ワーク②】前向きな視点で答えてみよう
次に、病気を『チャンス』として捉え、患者さんが前向きな未来を描けるように回答してみましょう。
病気をきっかけに健康を改善し、未来に希望を持てるような言葉を使っていきます。
例えば、こんな風に答えることができるかもしれません

糖尿病は確かに管理が必要な病気ですが、しっかりと治療や生活習慣を見直すことで、健康を大きく改善することができます。
今からでも遅くはありません。
適切なサポートを受けて、一緒に健康な未来を築いていきましょう。

糖尿病をきっかけに、今後の健康について見直すことで、5年後、10年後には『良いきっかけだった』と感じることができるかもしれません。
健康管理を始めることで、より充実した未来を迎えられるよう私がサポートします。
こういった前向きな言葉を使うことで、患者さんの気持ちが少しずつ変わっていくかもしれません。
患者さんに希望を持ってもらうためには、薬剤師として寄り添い、無理なく伝わる適切な言葉を選ぶことが非常に重要です。
【ワークまとめ】真のかかりつけ薬剤師になるために
薬剤師が真のかかりつけ薬剤師として信頼されるためには、薬の知識を伝えるだけでは十分ではありません。
大切なのは、患者さんとの信頼関係を築くことです。病気についての理解を深め、患者さん一人ひとりに寄り添いながら、共に前向きな未来を描くことが求められます。
たとえば、患者さんが『ガンになって、家族の大切さや生きる意味を考えるようになった』と話すことがあります。
病気がきっかけで、人生観が変わる人は意外と多いものです。
薬剤師として大事なのは、病気の説明を教科書通りにするだけではなく、患者さんの気持ちを理解し、前向きな視点でサポートすることです。
教科書通りの知識だけでは、患者さんに不安を与えてしまうこともあります。
例えば、

この検査値を見てください。
これが高くなるとこういうことになって…大変です…
こういった言い方は、患者さんに脅しのように感じさせることがあります。
しかし、薬剤師はただ情報を伝えるだけではなく、患者さんに安心感や希望を与える役割を果たしています。
今後求められるのは、病気や健康について前向きな視点を持ち、患者さんが自分の未来をより良く切り開く手助けをすることです。
知識を伝えることはもちろん大切ですが、患者さんが自分の健康に積極的に向き合い、改善に向けて前向きに取り組むためのサポートをすることが、真のかかりつけ薬剤師としての役割です。
薬剤師としての自分の役割を再確認し、患者さんに安心感と希望を与える存在であり続けることが、信頼される薬剤師になるための第一歩だと思います。
まとめ
今回は、言葉が私たちの仕事や患者さんとの関係に与える大きな影響についてお話ししました。
言葉は、つい何気なく使ってしまいがちですが、実はその積み重ねが自分や周りの雰囲気を大きく変えることがあるんです。
例えば、『忙しい』と思っても、『充実してる』と言い換えるだけで、気持ちが少し前向きになります。
逆に、ネガティブな言葉ばかり使うと、気づかないうちに自分も周りも気分が沈んでしまいます。
言葉には本当に不思議な力があります。
でも、ポジティブな言葉を意識して使うのは、今からでも遅くありません。
今日から、『忙しい』を『充実してる』に、『大変だな』を『やりがいがある』に変えてみませんか?
最初は意識しないと難しいかもしれませんが、慣れてくると自然とポジティブな言葉が出てくるようになります。
そして、その言葉が患者さんや職場の雰囲気を少しずつ変えるきっかけになるはずです。
まずは一歩踏み出して、言葉の力を活かしてみましょう!
ポジティブな言葉が、自分も周りも笑顔にすることを実感できるはずです。
毎日が同じ繰り返しで、なんだか疲れが溜まっていく…