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薬局薬剤師のための問題解決講座③|実践編(現場の3つの事例)

薬局教育部

この記事は以下のような方におすすめです。

  • 色々な問題を効率的・効果的に解決できるようになりたい方
  • 問題が起こっているとき根本原因の特定とその解決の手順を知りたい方
  • どんな場合でも通用する問題解決の手順(スキル)を知りたい方

前回に引き続き、『薬局薬剤師のための問題解決講座』のシリーズ最終回の3回目です。

今回は、薬局の現場で起こっている事例を3つ紹介して、具体的にどのようにアプローチしていくかについて解説していきます。

前回までの復習

薬局薬剤師のための問題解決講座を3回シリーズで紹介してきました。

第1回目では、『そもそも問題とはどういうことか?』から始まり、本質的問題の特定と解決への道筋について、失敗事例なども紹介しながら具体的に解説してきました。

問題解決は、下図のように『到達可能なあるべき状態』と『現状』とのギャップから本質的問題を把握し、ここに対処していくことから始まります。

第2回目では、薬局内でよく起こる簡単な事例を用いて実際の問題解決の仕方を解説してきました。

問題に対しての4つの返答の紹介とその具体的な返答方法、そして問題解決をしていくための返答の手順を具体例を用いて解説してきました。

問題解決の手順

そして今回の3回目では、新たに3つの事例を紹介し、その具体的な最初のアプローチの仕方(問題の所在の探し方)について解説していきます。

では始めていきましょう!

【事例①】薬局の売上を伸ばしたい

1つ目の事例は、薬局の売上を伸ばしたい事例です。

『売上を伸ばす』というと、すぐに『処方箋受付回数を伸ばす』となるかもしれませんが、他にも様々な要素があります。

調剤薬局の場合、売上を伸ばしていくためのロジックツリーは、少し大雑把ですが下図のようになります。

この図を見ていただくと、薬局の売上を伸ばす要因は複数あることが分かります。

こういったロジックツリーを作った後に、まずは課題を『処方箋の売上』を伸ばすのか、『OTCの売上』を伸ばすか決めていきます。

『OTCの売上』を伸ばすなら、処方を受けている診療科目と関連する商品を置いてみたり、季節に応じた薬剤師おすすめのOTCや健康食品を品揃えするなど様々な施策があります。

一方、『処方箋の売上』を伸ばすなら、『枚数』を伸ばすのか、『単価』を上げるのかを考えていきます。

『枚数』なら新規獲得の伸ばし方と既存患者さんの離脱防止などを考え、『単価』なら各種加算を積極的に算定できる仕組みづくりが必要です。

このように問題解決の一番最初の手順である『問題(課題)の所在(Where)』をどこに設定するかから始めていくと、打ち手が具体的になり効果的に問題解決(売上を伸ばす)に近づいていきます。

あなたの薬局で手付かずになっている領域、比較的簡単に伸ばせる領域などを選んで次の対策を取っていくと良いでしょう。

【事例②】服薬指導のレベルを上げたい

2つ目の事例は服薬指導のレベル(質)を上げていくための事例です。

ここでちょっと質問です。

例えばあなたが薬剤師として上記のような質問を受けた際にどのように対応しますか?

ここで1分ほど考えてみてください。

こういった質問を受けた際には、多くの薬剤師は、このように答えてしまいがちではないでしょうか。

糖尿病は、自覚症状が少ないため軽視されがちですが、放置すると健康や生活の質を大きく損ねる可能性があるため、注意が必要で、実はとても怖い病気なんです。

長期間血糖値が高いままだと、体のさまざまな部分が少しずつダメージを受け、視力の低下や失明、腎不全による透析、手足の感覚麻痺など、深刻な合併症が現れるので注意が必要です。

これらの返答は間違ってはいないのですが、相手にとって正解かというと、必ずしもそうでない場合があります。

なぜでしょうか?

ここまで問題解決の記事を読んでこられたあなたならお気づきだと思いますが、この返答は問題の所在(Where)を確認する前に、解決策の提案(How)をしているからですね。

問題解決は、まずは問題の所在(Where)の確認から始めていきましょう。

問題の所在を確認するために、共感も入れつつ、まずはこのように聞いていきましょう。

糖尿病と言われてご不安なんですね。
そのお話を聞いてどのように思われましたか?

まずは共感(Empathy)を入れつつ、問題の所在(Where)を聞いて、患者さんがどこに不安を感じているかを探っていきます。

そうすると下図のように、患者さんの知識レベルに応じた返答が返ってくるはずです。

こうして問題の所在(患者さんの知識レベル)を確認した後ならば、こちらも適切な応対ができるはずです。

全ての患者相談に当てはまることですが、

相手の知識レベル(Where)を確認してから、そのレベルに応じた指導をしていくようにしましょう。

【事例③】薬歴の内容を充実させたい

3つ目の事例は薬歴記入のレベル(質)を上げていくための事例です。

これに関しても少し考えてみましょう。

この事例も【事例②】の時と同じように、

『薬歴をしっかり書きましょう』
『最近、薬歴がきちんと書けてないから書くように』
『薬歴は重要だからきちんと書くように』

など、薬歴が書けていない理由がどこにあるか(Where)を探らずに指示を出してしまうのでは効果が望めません。

そこで、

薬歴のレベル(質)を上げていくために、まずはどういった問題・課題(Where)が考えられるかを列挙してみましょう。

考え方としては、あまり複雑にならずに、薬歴のレベル(質)が落ちてしまう原因はどこにあるか(Where)を考えていくと良いでしょう。

では、そういった可能性のある問題・課題の項目と内容を挙げてみます。

項目内容
時間の不足業務が忙しい、人員が足りないので記載する時間がない
知識の不足医薬品の様々な情報や調剤報酬の加算算定の知識が不足
記載の重要性の認識不足薬歴を記載する法的・医療的な重要性の理解ができていない
教育・研修の不足薬歴の書き方、記載技術を向上させる研修を行なっていない
記載方法のルール化薬歴記載のルールやフォーマットが統一されておらずバラバラ
電子薬歴の使い方システム操作が複雑、操作方法のトレーニング不足など
指導を受ける機会フィードバックがなく、薬歴記載レベルを上げる機会が無い
コミュニケーションスキル患者さんから必要な情報を聞き出せていない
すぐに記載する習慣薬歴記載がルーティン化されておらず常に後回しになっている
動機付けの欠如薬歴記載が義務感のみで行われているため質が上がらない
薬剤師としての経験不足どの情報が重要かの判断ができず記載内容も薄くなる
心身の状態日常業務のストレスや疲労で薬歴記載業務が疎かになっている

まずはこういった原因となっている可能性のあるもの(Where)を列挙していくことから始めていきましょう。

漏れなくダブりなく列挙できたら、あなたの薬局内では、どこにその原因があるか(Where)を特定し、その原因に対しての対応策を考えていくと良いでしょう。

問題が表面化してきた時には、必ずその問題を引き起こしている前提となるもの(Where)があります。

まずはそれを漏れなくダブりなく列挙することから始めていきましょう。

そしてその後に、その問題を引き起こしている原因は何か(Where)を特定し(複数ある場合の方が多い)、それに対しての対応策を講じていきましょう。

こうすることで根本的な問題解決に繋がっていきます。

まとめ

3回シリーズで薬局薬剤師のための問題解決講座について紹介してきました。

問題解決力はセンスや能力ではありません。

スキルです!

問題とは、現状とあるべき姿のギャップであり、

その解決の手順は、『問題の所在(Where)』→『原因の追求(Why)』→『解決の手段(How)』の3ステップで考えていく方法を解説してきました。

問題解決のスキルは、仕事だけでなくプライベートでも様々な場面で非常に役に立つスキルです。

ぜひ今回紹介してきた3つの記事を何度も何度も読んでこの問題解決のスキルを身に付けてください。

そして頭で理解できたたら、あとはスキルを意識して何度も何度も使っていくことが重要です。

それを何度も繰り返していくうちに、『分かる』→『できる』になっていくことでしょう。