いきなりですが、
皆さんの薬局にはこういった問題がありませんか?
患者さん・医療機関との対応で困っている…
患者数が減ってきて困っている…
こういった問題はどこの薬局でも日常的に起こっているもので、私達が薬局で仕事をしていく上では、ここで紹介した以外にも本当にたくさんの問題が常に起こっています。
そういった問題に対して責任のある立場であればあるほど、向き合って(問題解決)いかなければなりません。
問題解決のスキルは組織運営していく上で非常に重要で、誰もが身につけておかなければならないスキルです。
そこで今回は、薬局薬剤師向けの問題解決のスキル(論理的思考のスキル)について3回シリーズで研修を行なっていきます。
まず今回は、論理的思考のスキルと本質的問題の発見(課題化)について失敗例なども紹介しながら具体的に解説していきます。
はじめに
結論から申しますと、
『問題解決』とは『論理的思考(ロジカルシンキング)』と言い換えることができます。
論理的思考とは、直観に頼らず、物事を筋道立てて客観的に考える能力で、目標を明確にし、その達成に向けたシナリオを論理的に組み立てることができるスキルです。
実は論理的思考は、MBA(経営学修士号)のカリキュラムでも重要視されるスキルであり、経営戦略やマーケティング、会計などを学ぶ過程で不可欠なものとなっています。
MBAとは(補足説明)
MBAとは『Master of Business Administration』の略で、日本語に訳すと『経営学修士号』となります。
これは、ビジネスや経営の専門知識を学ぶための大学院レベルの学位プログラムです。
MBAでは、経営戦略、マーケティング、会計、リーダーシップなど、企業経営に必要なスキルを体系的に学びます。
卒業後は、企業の管理職やリーダーのポジションで活躍することが期待されています。
論理的思考のスキルは、ビジネスの現場で高く評価されるだけでなく、一般の社会人にとっても非常に重要なスキルです。
この論理的思考のスキルを活用することで、仕事だけでなく、プライベートの日常生活など、あらゆる場面で問題を解決に導くことができます。
仕事では具体的に以下のような利点があります。
- 効率的・効果的に問題を解決できる
- 交渉などで相手を説得しやすくなる
- プレゼンが明確で理解されやすくなる
これらの利点は、ビジネスパーソンだけでなく、どんな職業の人にとっても有用であり、私達の仕事の質を高めるために必要なスキルです。
もちろん薬局薬剤師でも、対薬局内スタッフ、対患者さん、対ドクターなど、あらゆる相手に対して必要となってくるスキルですね。
そもそも問題とはどういうことか?
ここでちょっと質問です。
そもそも問題とは、なんでしょうか?
こういった質問をすると、現場から例えばこういった答えが返ってきます。
『人員が足りない』
『門前の診療延長時間が長い』
『待ち時間のクレームに困っている』
『門前のドクターの対応に困っている』
『○○さんの教育が上手くいかず困っている』
などなど様々な意見が出てきます。
ここで注意しないといけないのが、私たちが問題だと思っていることの多くは単なる『現象』であって、本質的な問題とは言えないことが多いんですね。
つまり、
ここで紹介した内容は単なる現象なんですが、これらを『問題』だと捉えてしまって、すぐにその対処方法を見つけ出そうとしてしまうと、本来の問題点を発見できません。
『問題が解決できないのはなぜか?』
『問題解決したと思っても、また同じような問題が出てくるのはなぜか?』
もしこういったことを感じているようならば、解決策の良し悪し以前に、問題の捉え方が間違っている可能性が高いからです。
問題解決できないことが繰り返されているようならば、問題についての捉え方を考え直した方が良いかもしれません。
問題の特定と解決への道筋
では問題をどのように捉えれば良いか解説していきます。
問題とは一言で言うと、下図のように『目標(あるべき状態)と現状とのギャップ』です。
まず、現状を正確に把握し、そして到達可能である『あるべき状態(目標)』を具体的に設定します。
その時に、初めてギャップが生まれ、本当の問題が明確になってきます。
つまり問題の発見とは、『あるべき姿』と『現状』のギャップを把握することから始まります。
要するに、『ギャップ』をもたらすものが何かを考え、そのギャップを生み出していることを突き詰めていくことが正しい問題解決のスタートになってきます。
現場で起こった問題解決の失敗例
長年現場を見ていると、残念な話なのですが、問題解決に失敗した事例も多く見てきました。
私は問題解決の失敗は、大まかに分類すると下記の2つのうちのどちらかに起因するもと考えています。
- 現場で起こっている現象だけを見て対症療法的な解決策で対応しているケース
- あるべき状態の設定がそもそも間違っているので問題の根本的解決に至らないケース
分かりやすいように、ちょっと事例をあげてみますね。
現場で起こっている現象だけを見た対症療法の解決策
薬局スタッフの残業時間を減らす対策をした時の事例です。
薬剤師の業務負担が増えてきたとき、勤務スタッフの残業時間は比例して増えるようになりました。
これを改善しようと、薬局はとにかく最優先で残業時間の削減に努めました。
つまり『あるべき状態』である業務の効率化や役割分担の見直しを考慮せず、現状の問題(残業の多さ)にだけ対処してしまいました。
その結果、一時的に残業時間は減ったものの、業務の質が低下し、患者対応が疎かになるなど、新たな問題が発生してしまいました。
あるべき状態の設定がそもそも間違っている事例
待ち時間のクレームが多いので対応した時の事例です。
待ち時間の短縮を目指して、薬局内に新しいシステムを導入するという『あるべき姿』を設定しました。
しかし、実際には待ち時間の長さの主な原因はスタッフの人数不足やコミュニケーションの不備が原因でした。
この誤った『あるべき姿』に基づいてシステム導入を行ったため、根本原因は解消されず、待ち時間の改善はほとんど見られず、問題解決が進まないままとなりました。
このような事例を経験した方もいるかもしれませんね。
こういった問題解決の仕方(手順)を間違えると、こちらが期待しない結果を招いてしまう場合があります。
こういった失敗を起こさないためにも、問題解決にはその手順がありますので、それに関しては、この次の記事で紹介していきます。
問題解決で一番大事なこと
ここまで紹介してきた内容を整理すると、問題解決は、『現状』と到達可能な『あるべき状態』とのギャップを見るけることから始めることを紹介してきました。
これは問題解決のうち、『問題発見(課題化)』のプロセスです。
問題解決は、問題発見のあとは問題解決の打ち手を実行していく必要があります。
つまり、①問題発見→②問題解決の2段階で進めていくことになります。
その中でも今回紹介した『問題発見(課題化)』は、非常に重要で、ここを間違えなければ、どんな状況になったとしても少なくとも解決に向けて進むべき道筋・方向性を見失うことはありません。
問題解決は最初が肝心です。
問題解決策の質(クオリティ)は、問題発見の段階ですでに相当の部分が決まってしまいます。
なぜなら、問題の本質を捉えている課題設定かどうかが、最終的な解決策の方向性と質を規定する絶対条件だからです。
このことに気づかずに、ついつい解決策の精度を上げることばかりに注力してしまうケースが多いのが現状です。
問題解決は今回紹介した、問題発見(課題化)にしっかりと時間をかけて熟考して進めていくようにしましょう。
問題解決のサイクル
今回の、『薬局薬剤師の問題解決講座』の3回シリーズで実施する研修内容について紹介します。
下図をご覧ください。
1つ目の『本質的問題の発見』をするフェーズは、今回紹介してきました。
2つ目の『解決のための施策』を考えていくフェーズは次回(2回目)紹介していきます。
3つ目の『実行』のフェーズに関しては、3回目に現場での実例として紹介していきます。
この3つのサイクルをイメージして、2回目・3回目の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、薬局薬剤師のための問題解決講座の1回目、論理的思考のスキル(問題解決のスキル)について紹介してきました。
『論理的思考とはどういうことか?』から始まり、本質的問題の発見の仕方について、失敗事例なども紹介しながら具体的に解説してきました。
問題解決のスタートは本質的問題の発見で、これは非常に重要です。
ここで紹介した内容をしっかりと把握した上で、次の問題解決の手順について読み進めてください。
次回は、薬局薬剤師のための問題解決講座の2回目、『問題解決の手順』について紹介していきます。
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