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薬剤師の相手に伝わるコミュニケーション術②|具体的な事例紹介

薬局教育部

この記事は以下のような方におすすめです。

  • 患者さんや薬局内スタッフとのコミュニケーションで伝え方に困っている
  • 相手に依頼したり、依頼されたことを断る伝え方に困っている
  • コミュニケーションを通じて良好な人間関係を構築したい

前回に引き続き、今回はシリーズの2回目です。

今回も『アサーション』と言われる自他尊重のコミュニケーションスキルについて紹介していきます。

前回の復習

まずは前回(第1回目)のおさらいをしておきましょう。

前回は、まず『アサーションとは何か?』について、その概要を紹介しました。

アサーションとは、一言で言うと『さわやかな自己主張』とも言われ、自分だけでなく相手も大切にしながら、自分の気持ちや意見を意見を正直に率直に、その場にふさわしく表現することであることを紹介しました。

これについては、『簡単に言うけど実際はなかなか難しい』という方が多いので、薬局の現場での最も多い事例である『患者さんにお渡しするお薬が在庫していない(足りない)』について、実際の対応方法について紹介しました。

薬局の現場で行われている多くの3つの応対パターンを紹介し、そのメリット・デメリットを踏まえ、具体的にどのように表現すればよいかについて、セリフ事例も紹介しながら解説してきました。

そこで2回目の今回は、『患者さんにお渡しするお薬が在庫していない(足りない)』場合の対応方法だけでなく、様々な事例でも対応できる『アサーションの型』について紹介します。

前回もお話ししましたが、アサーションはコミュケーションスキルです。

身につけるとコミュニケーションが得意・不得意に関係なく、誰でも使うことができます。

今回紹介する『アサーションの型』のスキルを身につけて、どんな場面であっても、『伝えにくいことを相手に伝えるスキル』を身につけていきましょう。

薬局の日常会話でのアサーション

まずは簡単な日常会話での型を紹介します。

結論から申しますと、日常会話でのアサーションを使う場合に有効なのは、『私(I)』を主語にした表現を心がけることです。

どういうことか具体的にみていきましょう。

例えば、少し想像して欲しいのですが、もしあなたが、下記のような言葉をかけられたら、どのように感じるでしょうか?

セリフ事例
  • ひどいことを言う人ですね!
  • もっと協力してください!
  • 何度言ったら分かるんですか?

どうですか?

何となく『責められている』『非難されている』ような印象を受けませんか?

『ひどいことを言う人ですね!』では、『あなたはひどい人(許せない)』、『もっと協力してください』では、『あなたは非協力的だ(協力すべきだ)』、『あなたはダメな人(もうあきれた)』といったようなニュアンスが相手に伝わります。

相手も感情を持った人間です。

いくら正しいことであったとしても、こういった言葉を投げかけられた相手は、あなたに反発したり、最悪の場合、受け入れ拒絶の状態になったりします。

では、どのように表現したらよいのか?

この3つの事例をもとに、ちょっと表現方法を変えて、日常会話でのアサーションの基本パターンを身につけていきましょう。

日常会話での基本パターン

先ほど、3つの事例を紹介しました。

これらの3つの事例が、なぜ相手を責めたり非難しているような印象を与えるかというと、コミュニケーションの構造で、主語が『あなた(You)』になっているからです。

あなた(You)を主語にした表現
  • (あなたは)ひどいことを言う人ですね!
  • (あなたは)もっと協力してください!
  • (あなたは)何度言ったら分かるんですか?

こんな感じで、

では、これらの表現を『私(I)』を主語にした表現にさわやかなに変換してみると。

私(I)を主語にした表現
  • そう言われて,私はショックです
  • 力を貸してもらえると,私は助かります
  • 大事なことだから,しっかりと覚えてほしい(と私は思っている)

これは、『私(I)メッセージ』と言って、主語を『私』に置き換えて表現する方法です。

相手を責めるのではなく、自分の感情をきちんと伝える方法として、この『私(I)メッセージ』は有効です。

では薬局の現場でよく使う5つの事例について、『私(I)メッセージ』を使った具体的な表現方法を紹介していきます。

相手にものを頼む時

年配のベテランのパート薬剤師さんに駐車場の掃除を依頼するとき。

NG対応例

駐車場の掃除をしていただけますか?」

OK対応例

もし今、手が空いているようなら、駐車場の掃除をして頂けると助かります

クッション言葉を前に置いて、最後に『私(I)メッセージ』の形式で、「〜(私は)助かります」と締めくくります。

相手の依頼を断る時

患者さんが希望するジェネリック医薬品の取り寄せを依頼してきたが、どうしてもそのジェネリック医薬品が入荷しない時。

NG対応例

申し訳ございません。このジェネリック医薬品は現在入荷しません

OK対応例

○○様もご存知かも知れませんが、現在ジェネリック医薬品の流通が日本全国規模で発生している関係で、残念ながらご希望の医薬品も不足しておりまして、いつ薬局に入荷するか現時点では未定と医薬品卸から伺っています。

状況説明を入れた後に、「(私も)残念ながら〜」と『私(I)メッセージ』を入れることで、本当は患者さんの希望に寄り添いたいメッセージが伝わる表現です。

相手に褒められた時

患者さんがあなたの接客を褒めてくれた時。

「あなたよく気が利くね」「あなた親切ね」とか言われた時。

NG対応例

いえいえ、とんでもございません「私なんてぜんぜん」

OK対応例

「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです」

褒められると誰でも嬉しい気持ちになりますよね。

それは相手から自分を認めてもらっていることで、自己肯定感が高まり自尊感情が高まるからです。

謙虚が美徳という日本人にとっては、褒められた時に照れくさく、ついついそれを否定する返事をしてしまいがちです。

そうではなく、素直に相手の言葉を受け入れ、自分の気持ちを返していきましょう。

相手の言葉を素直に受け入れる表現の方が相手も褒めがいがあり、褒めた相手にきちんと自分の感情を返す誠意ある対応になります。

相手に怒りを感じた時

薬局の従業員が連絡もなく30分以上出勤が遅れてきた時。

あなたは最初は心配していたが、だんだんイライラしてきた時。

NG対応例

「全然大丈夫ですよ」or「なんで遅れたの?」

OK対応例

「あなたからの連絡がなく30分来なくて、私は心配でした」
「連絡を頂けると、私達も安心するので次回から遅れそうな時は連絡を頂けると助かります」

状況説明を入れた後に、「私達も安心するので〜」と『私(I)メッセージ』を入れることで、本当は相手のことを心配していたというあなたの本当の感情が相手に伝わります。

相手と違う意見を言う時

あなたの直属の上司から指示に従うように指導を受けたが、どうしても納得できない時。

NG対応例

「分かりました」or「あなたの意見に反対です」

OK対応例

「私は異なった見方(意見を)をしています。私はこのように思います。」

NG例にも記しましたが、何も言えずに「分かりました」だと、主張しないあなたはどんどんストレスを溜めていきます。

かといって「あなたの意見に反対です」は、明らかに相手に対しての宣戦布告とは言わないまでも、かなり相手を攻撃する表現になってしまします。

本来、人の意見には正しいも間違いも無く、あるのは違いだけのはず。

そういった物事の本質を理解したうけでアサーションのスキルを使っていくと良いでしょう。

まずは、日常会話の中であなたの気持ちを自分に素直に、相手への配慮を忘れずに相手に伝えることがアサーションのスタートです。

ただ、これだけでは相手にあなたの気持ちは伝わりますが、問題解決にまで至らないケースもあります。

そこで次に、何か問題が起こったと時に、それを解決していくためのコミュニケーションスキルを紹介していきます。

薬局の問題解決に向けてのアサーション

先ほど紹介した日常会話のアサーションの表現に、ここで紹介する問題解決に向けてのアサーションの表現方法を身につけると、相手とのコミュニケーションをスムーズに進めることができます。

ポイントは3つ。

ポイント
  • 状況を説明する
  • 提案を入れる
  • 選択肢を示す

これも具体例を示した方が分かりやすいと思います。

ここで、シリーズ1回目の事例をもとに解説していきます。

お薬が足りない事例

『○○様もご存知かも知れませんが、現在ジェネリック医薬品の流通が日本全国規模で発生している関係で、残念ながらご希望の医薬品も不足しておりまして、いつ薬局に入荷するか現時点では未定と医薬品卸から伺っています。

ただ今、お薬をすぐにお渡しできるように他の医薬品の切り替えを病院の先生に問い合わせをしたりなど、薬局でできる限りの対応をさせていただこうと考えています。対応策が整い次第、ご案内差し上げます。それまでのお時間、10分ほどお待ちいただけますか?お急ぎでしたら、外出していただいても構いませんし、こちらからお電話差し上げることも可能です。どちらがご都合よろしいでしょうか?』

1つずつ解説します。

赤のマーカーを引いたところが状況説明です。

まずは現在起こっている状況を患者さんに理解していただくことが何よりも先決です。

ここでの表現で気をつけたいのは、先ほどの日常会話でのアサーションのところで説明した、『私(I)メッセージ』です。

「(私は)残念ながら〜」というように『私(I)メッセージ』を効果的に入れていきましょう。

黄色マーカーを引いたところが提案です。

問題解決をするための提案を相手に伝えます。

問題解決力に関しても、これもスキルなのでトレーニングすれば誰でも鍛えられるのですが、また別の記事で紹介していきます。

青マーカーを引いたところが選択肢です。

提案が1つだと、それは時には相手に対しての丁寧な命令になってしまいがちです。

特に患者さんの要望を断るようなこのような事例では、選択肢をいくつか作って差し上げる方が親切で、クレームにも繋がりにくくなります。

このように、日常会話のアサーションを意識しつつ、『状況描写』『提案』『選択肢』を会話の中で相手に伝えてあげると、非常に丁寧でさわやかな印象を持った表現になります。

ぜひ現場で活用してみてください。

今回のまとめ

2回シリーズで、自他尊重のコミュニケーションスキルである『アサーション』について紹介してきました。

この2回シリーズで、アサーションの要点を薬局での事例を出しながらできるだけコンパクトに分かりやすく解説してきたつもりです。

最後に大切なことを1つだけお伝えします。

それは、『スキルは使わないと身につかない』です。

頭で分かっていることが重要ではなく、実際にできるようになることが重要です。

アサーションのコミュニケーションスキルは、やはりスキルなので自分で何度も意識して使ってみて初めて習慣化し、自分のものなって身についていきます。

ぜひ現場で何度も使ってみて下さい。

そして皆さんの自他尊重のコミュニケーションスキル(アサーションのスキル)が向上することを願っております。

今回は2回シリーズで『話すスキル』について紹介してきましたが、このサイト内では、『聴くスキル』についても3回シリーズで詳しく紹介しています。

『話すスキル』と『聴くスキル』を使いこなせると、あなたのコミュニケーションスキルは劇的に向上します。

良ければ参考にしてみて下さい。