
薬局のスタッフとうまく連携したいけど、何から手をつければいいのか分からない…
こんな悩み、一度は頭をよぎったことがありませんか?
管理薬剤師としての仕事は、単なる薬の管理だけじゃなく、チームのまとめ役としての役割も求められます。
でも、
『どうすればいいのか?』
『どこから学べばいいのか?』
手探り状態の人も多いはず。
そこで今回から、管理薬剤師向けのマネジメント研修について、シリーズでじっくり解説していきます。
まず初回は、『管理薬剤師に求められる人材像』についてお話しします。
いきなり細かいスキルや実践テクニックに入る前に、まずは『管理薬剤師として、どんな存在であるべきか?』という土台を固めておきましょう。
ここを押さえておくことで、次回以降に紹介する具体的なスキルやトレーニング方法が、グッと理解しやすくなります。
それでは、さっそく始めていきましょう!
目次
管理薬剤師として求められる3つの役割

管理薬剤師って、結局どんなことが求められるんだろう…?
そう聞かれて、即答できる人は意外と少ないかもしれませんね。
もちろん、『保険調剤のルールを守ること』は大前提。
でも、それだけで終わりではなく、薬局の管理者として求められる役割は思った以上に幅広いんです。
そう聞くと、

なんか大変そう…
と思うかもしれませんが、管理薬剤師って、実はそんなに構える必要はありません。
もちろん、一般の薬剤師と比べると責任は増えます。
でも、それってつまり、薬剤師としても、社会人としてもステップアップするプロセスでもあるんですよね。
極端な話、『管理薬剤師=キャリアの登竜門』みたいなもの。
私はそう考えています。
管理薬剤師とは、『薬局で働く薬剤師』として、本当に一人前になっていくためのステップだと考えると、少し気が楽になりませんか?
さて、ここからは管理薬剤師として実際にやるべきことをお伝えします。
管理薬剤師になると、薬局の運営全般を任されることになります。
つまり、会社から『ヒト・モノ・カネ』を預かる立場になるわけです。
だからこそ、管理薬剤師には主に次の3つの領域でしっかりとしたマネジメントが求められます。
- 直接の成果 … 売上・在庫・利益・患者数など
- 価値の向上 … 加算の算定率、患者満足度、従業員満足など
- 人材育成 … 自己成長、部下の成長など
こう並べると、

こんなにたくさんあるの…大変…
と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
むしろ、これらを全部ひとりでやるのは無理です。
もちろん私も無理です。
だからこそ大事なのが、一緒に働くスタッフの強みを引き出し、チームとして全体の成果につなげる力。
これが、管理薬剤師に一番求められる『マネジメント力』なんです。

じゃあ、具体的にどうすればいいの…?

管理薬剤師に求められることは分かったけど、実際どう動けばいいの…?
そんな疑問が出てくると思います。
このあと、管理薬剤師が直面する具体的な課題と、それに対してどんなアクションを取るべきかについて解説していきます。
管理薬剤師が直面する3つの大きな課題とその対策
これまで、管理薬剤師に求められることや、やるべきことについて紹介してきました。
けれど、実際にそれを現場で実行していくとなると、いくつかの課題にぶつかることがあります。
そんな課題にどう向き合い、どう対処していくかが重要になってきますよね。
では、実際にどんな課題に直面するのか、そしてその課題にどう対応していけばいいのかを見ていきましょう。
管理薬剤師として働く中で、主に直面するのは次の3つの課題です。
- 業務の仕組みづくり
業務の標準化、在庫管理、調剤過誤防止対策、薬局運営をスムーズに回すための仕組み作りなど - 現場での対応力
スタッフ同士の連携、ドクター対応、患者対応、クレーム対応、状況に応じて柔軟に判断が求められる事例の対応など - スタッフの育成
後輩や部下の指導、モチベーション管理、チーム作りなど
それぞれ、どんなことに注意して取り組むべきか、具体的に見ていきましょう。
【課題①】業務の仕組みづくり
業務の仕組み作りって、結局のところ『どうやったら現場の問題をスムーズに解決できるか』を考えることにほかなりません。
理屈の上では解決できそうなことも、いざ現場でやってみるとうまくいかないことってありますよね。
経験が足りなくて判断に迷う場面も少なくありません。
だからこそ、大事なのは 一度落ち着いて状況を整理し、現実的にどう動けばいいかを考えること。
自分の経験や知識をフル活用しながら、より良い方法を見つけていくのがポイントです。
このあたりの考え方は、管理薬剤師向けマネジメント研修③〜⑤の事例演習(インバスケット演習)で詳しく取り上げていくので、ぜひ参考にしてみてください。
【課題②】現場での対応力
先ほど紹介したように、論理で解決できる問題も多いですが、人の感情が関わる問題は簡単に解決できないこともあります。
たとえば、いくら正論を並べても、相手の気持ちを無視してしまうとうまく解決できなかったり、逆に関係がこじれてしまうこともありますよね。
こういう場面では、相手の気持ちを落ち着かせたり、納得してもらうことが大切になってきます。
そのために必要なのが『現場での対応力』です。
現場での対応力とは、ただ説明するだけではなく、相手が納得できる形で話を伝えたり、前向きな気持ちになれるように働きかけるスキルのこと。
新しい考え方を受け入れてもらったり、リーダー(管理薬剤師)に協力してもらうには、次の3つの要素が重要だといわれています。
- 合意(相手が「なるほど、それは大事だな」と共感できること)
- 合理(話の内容が理屈に合っていること)
- 合気(お互いの考え方や価値観にズレがなく、納得感があること)
この3つがしっかり揃うと、相手も自然とあなたに協力しやすくなります。
このあたりの詳しい話は、管理薬剤師向けマネジメント研修②の管理薬剤師の職務・職能・職責のトレーニングで詳しく取り上げていくので、ぜひ参考にしてみてください。
【課題③】スタッフの育成
さて、最後のテーマはスタッフの育成です。
調剤薬局の仕事って、ひとりで全部こなすのは難しいですよね。
だから、スタッフみんなで協力してうまく回すことが大事になってきます。
で、ここがポイントなんですが、他のスタッフが管理薬剤師と同じ視点で動いてくれると、薬局の運営はめちゃくちゃスムーズになるんですよね。
だからこそ、スタッフ育成って管理薬剤師の大事な仕事なわけです。
とはいえ、育成に入る前に、まずは自分に問いかけてみてください。

・自分はスタッフのこと、ちゃんと理解できてるか?
・そもそも、自分はスタッフを育てようとしているか?
もし、ちょっとでも

・自分のほうが経験も知識もあるんだから、指示を出して動かしていくのが当然だ
・優しく接するとナメられるし、厳しくしないと成長しない
みたいな気持ちがあるとしたら……正直、それだけだとうまくいかないかもしれません。
じゃあ、どういう考え方が必要なのか?
それをシンプルにまとめました。
スタッフの改善すべき点を見つける
管理薬剤師としてスタッフに指導するとき、『自分ならこうするのに』と思うこと、ありますよね。
これは当然のことですが、そのまま押し付けてしまうと、スタッフ本来の課題を見落としてしまうこともあります。
大事なのは、『自分の考え方が基準になりすぎていないか?』と一度立ち止まって考えてみること。
というのも、薬局の運営は管理薬剤師ひとりで回せるものではなく、スタッフの協力があってこそ成り立ちます。
責任が重い仕事ではありますが、その分、スタッフの成長をサポートするのも管理薬剤師の役割です。
だからこそ、『どこを改善すればもっと成長できるか?』を客観的に見つけ、どう関わっていくのがベストなのかを考えていくことが大切です。
スタッフの自分より優れている点を見つける
指導するとき、ただ『ダメなところ』を指摘するだけではうまくいきません。
スタッフを成長させるには、むしろ『自分より優れている点』にも注目することが大事です。
たとえば、『この人、ここは自分よりすごいな』と思えるところを3つ挙げられるでしょうか?
意識して観察してみると、自分にはない良さを見つけることができるはずです。
人を育てるためには、改善点と優れている点の両方をしっかり見極めることが大切です。
片方だけではなく、両方バランスよく見ていくことで、スタッフとの関係も良くなり、薬局全体の雰囲気や働きやすさも変わってくるはずです。
まとめ
今回は、管理薬剤師向けマネジメント研修の第1回目として、管理薬剤師に求められる人材像についてお話ししました。
管理薬剤師は、薬局の運営を全般的に見渡す立場です。
売上や在庫管理、患者さんの満足度向上など、幅広いマネジメントスキルが求められます。
さらに、業務の流れを作ったり、現場で柔軟に対応したり、スタッフの育成にも力を入れなければなりません。
こうした課題にどう向き合い、どう解決するか、具体的な方法についてもお伝えしました。
今回お話ししたことを踏まえ、管理薬剤師として成功するためには、スタッフとの信頼関係を築き、チームで成果を出すことがとても大切だということを、実感していただけたのではないでしょうか。
これを機に、自分の役割やチームの一員としてどう動くべきかを改めて考え、実際に行動に移してみてください。
やってみることで、スキルも確実にアップしますよ!
管理薬剤師としてやるべきことが多すぎて、毎日忙しく、本当にこれでいいのか不安になる…