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能登半島地震における薬局薬剤師の災害時の対応で困ったこと

薬局教育部

この記事は、以下のような方におすすめです。

  • 能登半島地震での金沢市内の薬局の窓口業務のリアルを知りたい
  • 現場の薬剤師が何に苦労しているか知りたい
  • もし同じような災害が起こったときにどのように対処するか知りたい

能登半島地震直後の金沢での薬剤師応援業務

1月1日の能登半島地震が起こり、1月3日から金沢市内の薬局に応援にきています。

私が所属している薬局は金沢市内に数店舗あり、今回の震災で、被災地の中心部ほどではありませんが、様々な被害を受けました。

今回は、私が金沢の薬局で実際に働いてみて、

『薬局現場でどういうことに困ったか?』
『どのように対応してきたか?』
『有事に備えてどのようにしておくべきか?』

など、感じたことを紹介していきます。

NHKの報道に対しての薬局の対応

このNHKの報道に薬局の現場は一番振り回されたかもしれません。

この放送の翌日からは、薬局では『病院に行かなくても薬局に行けばお薬を貰える』と思い込んだ患者さんが薬局になだれ込みました。

災害エリアでの対応が金沢市全体に適応されると勘違いしたんでしょうね。

それは当然でしょう。

医療を提供している医療従事者側も被災しているので、誰もが余裕がなく、普段できている仕事もなかなかうまく噛み合いません。

また病院の医事課でさえも、NHKと同じように患者さんに伝えているものだから薬局はさらに大混乱でした。

災害時の薬局での窓口対応の仕方(フローチャート)

1月4日、5日はもう薬局内が大混乱でした。

こういった経験は、金沢市内に住んでいるスタッフはもちろん初めてで、最初はどのように対応すべきか戸惑いました。

厚生労働省(石川県薬剤師会含む)からは、何度も文章が流れてくるのですが、多くの患者さんがごったがえす薬局で、そんな長い文章をとても読んでいる暇なんてありません。

また読んだとしても文章の解釈が難しく、文章をたくさん書いているけど、実際の現場ではどのように対応したら良いのかというフローチャートの手順書のようなものが必要でした。

そこで実際に患者さんに説明するためのツールとして使用したのが、このフローチャートでした(2024年1月2日現在の情報なので変更されているところもあります)。

現在は、石川県薬剤師からの更新された様々な情報をもとに、このフローチャートを更新して使用しています。

このフローチャートをもとに1月4日から薬局で対応したのですが、いやいや、まだまだ想定外のことが続きます。

災害時の薬局での窓口対応の仕方(応対話法)

フローチャートができたけれども、それを患者さんに納得してもらうように説明してもわかってもらえない。

また分かってもらっても説明するのに時間がかかるということで、店頭で多くの時間を費やしてしまいます。

もうスタッフみんなもぐったりです。

そこで、次は『どのように説明したら短い時間で患者さんに分かってもらえるか?』が課題になってきました。

そこで応対話法(4つのステップ)を考えてみました。

現在でも『病院に行かなくても薬局に行けばお薬を貰える』という患者さんが来られますが、下記の手順で対応すると短時間の説明で、ある程度理解を得られています。

STEP

まずは患者さんに対してねぎらいの言葉をおかけする。
『今回の震災、本当に大変でしたね』
『承知いたしました。対応いたします』
という感じでまずは患者さんの要望を聞き入れる。
第一段階では、相手の話をきちんと聞いて対応しますという姿勢を示す。

STEP

『テレビ報道を見られて来局されたんですね』
『NHKなどでは薬局に行けばお薬が貰える』とテレビで報道されていましたが、実はその後、多くの国民に誤解を与えたとして、NHKが再報道しているのはご存知ですか?
という感じでNHKの再報道に対しての確認を取る。

STEP

『再報道の内容は、薬を処方箋無しで受け取れることができるのは、地震の影響で医師の診察を受けることができない場合のみであって、薬局や病院に行けるエリアなら病院に行ってお薬の処方箋を貰わなければならないという内容でした』
という感じで正しい情報を患者さんにきちんとインプットする。

STEP

最後に『大変な中、こちらにお越しいただいたので、私もこのまま処方箋無しでお薬をお渡ししたいのですが、それができずに残念です。お手数をお掛け致しますが、医療機関に受診して処方箋を貰ってきて頂けますでしょうか』
という感じで医療機関の受診を促す。

現在、金沢市内の薬局に来られる患者さんは、こういった対応でほぼ全ての患者さんがご理解いただけ、通常業務をスムーズに行うことができています。

実はこれは、『傾聴(アクティブリスニング)』、『アサーション』というコミュニケーション技法を少し応用して組み立てた説明文章なんです。

このサイト内では、傾聴やアサーションのスキルについても紹介しているので、薬剤師の服薬指導のなどに使う重要なスキルなので参考にしてみてください。

フローチャートと応対話法のセットで誰でも対応可能に

今回は、能登半島地震での薬局窓口の対応の一部を紹介しました。

フローチャートと応対話法のセットで、窓口業務は薬局内スタッフに周知できたので、今は比較的混乱がなく対応できています。

金沢での薬局業務を行って改めて痛感しましたが、どんな時であっても、やはり『仕組みづくり』が大事だな〜と実感しました。

仕組みとは?

仕組み作りとは、いつでも、どこでも、誰が行っても同じ成果を出せる方法を構築すること

今回は、窓口応対にスポットを当てましたが、フローチャートだけでもダメだし、応対話法だけでもダメだと思います。

仕組み作りは、今回のように現場に入りながら、『どうしたら全スタッフがきちんと動けるのか?』を模索しながら作っていくものだと、改めて実感しました。

現在は、NHKの報道も修され、薬を受け取れることができるのは、地震の影響で医師の診察を受けることができない場合のみであることが徐々に周知されてきたので、混乱は随分収まってきました。

とはいえ、能登で被災した方々の多くの方が、金沢市内に一時的に移り住んできており、薬局の受付は普段よりもかなり多くなっているので、しばらくは薬局側も大変な日が続きそうです。