薬剤師をして3年くらいが経ち、いよいよ管理薬剤師になるといった際に、こういった意見をよく耳にします。
いずれはするけど今はなりたくない…
とこんな感じで管理薬剤師になりたくない人が、あなたの薬局でも多いのではないでしょうか。
いや実際にすごく多いと思います。
今回は、そんな管理薬剤師になるべきかどうかを私の本音も踏まえてメリット・デメリット(求められること)を紹介していきます。
また最後にはデメリット(求められること)に対処していくための方法も紹介していきます。
管理薬剤師は引き受けるべきかどうか?
結論から先に申します。
もしあなたが、
『管理薬剤師をしたことがない』
『声をかけられていて迷っている』
ならば、迷わず管理薬剤師を引き受けてください。
もし、あなたが今後もずっと薬局薬剤師として生きていくなら、絶対に絶対に管理薬剤師をしておくべきでしょう。
管理薬剤師を一度でもしたことがある人ならお分かりだと思いますが、管理薬剤師と一般薬剤師では仕事の量、責任、ストレスは一般薬剤師と比べ物になりません。
じゃ、そんな大変な管理薬剤師はますますしたくない…
と思う人がいるかもしれませんね。
私自身も管理薬剤師を経験し、その後は、管理薬剤師を統括するエリアマネジャー、人事部の教育などを担当しきて、本当にたくさんの薬剤師を見てきました。
正直申しますと、管理薬剤師になればメリットだけでなくデメリットもあります。
デメリットは確かにあるのですが、それ以上にメリットの方がはるかに大きいことを今までの経験から実感し、確信しています。
様々な事情で管理薬剤師になれない人もいるかもしれませんが、もしチャンスが自分のもとに巡ってきた時には引き受けるようにしましょう。
では管理薬剤師を引き受けるメリット・デメリットを8つずつ紹介していきます。
管理薬剤師になる8つのメリット
ここでは管理薬剤師になる際の8つのメリットについて紹介していきます。
結論から申しますと、管理薬剤師になれば明らかにあなたの市場価値が上がり、デメリットをはるかに上回るメリットがあります。
ではどんな風にあなたの市場価値が上がるかについて、8つのメリットについて紹介していきます。
キャリアアップに繋がる
管理薬剤師としての経験は、まず第一にあなたのキャリアアップに繋がります。
管理薬剤師になった時点で、他の薬剤師や医療従事者との信頼関係を構築していく場面が多々あります。
そういった経験を通じて、リーダーシップやマネジメントのスキルが身につき、昇進だけでなく、転職する際にも有利になります。
私も薬剤師の面接に関わる場面がありますが、『管理薬剤師経験有』だと、他の薬剤師よりも、そういった薬剤師を優先的に雇うようにしています。
管理薬剤師をしていたということは、あなたとその他の薬剤師とを明確に区別するキャリアの違いになっていきます。
これだけでも十分に管理薬剤師を引き受ける価値はあります。
様々なスキルを身につけられる
管理薬剤師になると実際に多くのことを要求されます。
例えば、在庫管理、スタッフの教育・指導、薬局の運営全般に関する業務などについて、一定レベルの成果を要求されます。
最初から全てできる人はあまりいませんが、管理薬剤師は実際に業務を行いながらこういったスキルを身につけていきます。
これらのスキルは、社内だけでなく他の職場へ転職する際にも非常に役立ちます。
年収が上がる
管理薬剤師は、一般のその他薬剤師に比べて手当などが付与され、年収が上がります。
責任や仕事量は増えますが、報酬もその分、高くなります。
思考力が身に付いてくる
管理薬剤師業務を行っていると、毎日の薬局の運営や患者さんの対応など、日常業務の様々な場面で管理者としての判断が求められます。
こういった業務を日々行うことにより、問題解決能力や判断力のスキルが鍛えられます。
日々の業務で思考力が訓練されることにより、その他薬剤師と比べて思考力の差がどんどん開いていきます。
この差は年月を重ねれば重ねるほど、圧倒的な差になっていきます。
法律に詳しくなれる
保険薬局を管理する管理薬剤師は、薬機法や医薬品に関する規制について深く学ぶ機会が増えます。
これにより、薬局運営を大局的な視点で行うことができるだけでなく、様々な法的なトラブルを未然に防ぐ知識が身につきます。
患者さんとの信頼関係を構築しやすい
患者さんにとって、その薬局の責任者ということで信頼を得ることができます。
地域の患者さんと信頼関係を築きやすくなり、地域社会に貢献している満足感を得る機会が増えます。
経営的視点が身に付く
薬局の経営に関わることで、経営者としての視点やマネジメントスキル(人・金・物)が訓練されます。
経営的視点を訓練しておくと、転職や将来的に独立して自分の薬局を開業する際にも大いに役立ちます。
他職種との連携ができる
管理薬剤師となると医師、看護師、他の医療従事者と連携をする場面があります。
こういった経験は、チーム医療の中での薬剤師の役割を再認識する経験となったり、他職種とのコミュニケーションの訓練にもなります。
以上、代表的な8つのメリットについて紹介してきましたが、他にもメリットは、まだまだたくさんあります。
管理薬剤師を行うことで、その他薬剤師ではなかなか経験できない業務を行うことにより、視野が広がっているので、そこで得られる経験は必ず未来のあなたの財産になっていきます。
機会があれば、ありがたくその機会を活用し、あなたのキャリアアップに繋げていくようにしましょう。
管理薬剤師になる8つのデメリット(求められること)
先ほどは、管理薬剤師になるメリットについて紹介してきましたが、全てがメリットばかりではありません。
代表的なデメリットについて8つ紹介していきます。
デメリットと捉えるとネガティブなイメージがありますが、『デメリット≒求められること』と捉えると良いかなと思います。
ただデメリットばかり紹介すると、管理薬剤師の業務に踏み出せない場合もあるので、最後に対処法(おすすめ書籍)も紹介していきます。
責任が増える
管理薬剤師は薬局の長のため、どうしても運営全般に対する責任が重くなりがちです。
例えば薬局内でミスやトラブルが発生した際には、その対応や処理を求められる時があります。
そのためにも問題解決力を身につけておく必要があります。
業務が増える
管理薬剤師は、通常の薬剤師業務に加えて、在庫管理、スタッフの指導、他職種との連携など、多くの追加業務が発生します。
これにより、管理薬剤師は一般的に勤務時間が長くなる傾向があります。
店舗スタッフに上手に業務と責任を割り振りしておく必要があります。
ストレスが増える
責任が増えたり、業務が増えることにより、どうしても精神的なストレスが増えることがあります。
ストレスに対しての対処法を身につけておく必要があります。
プライベートの時間が減る
業務が増えることで、プライベートの時間が減少する可能性があります。
また責任あるポジションのため、休暇の取得が他の薬剤師と比べて取りにくくなる場合もあります。
休暇の取り方のルールを薬局内で決めておく必要があります。
法的なリスクを負う
薬局を運営していく上での法律や規制を守る必要があり、これに違反しないように薬局運営を行っていく必要があります。
許認可ビジネスである保険薬局運営の責任者である以上、法律のことを知っておく必要があります。
人間関係のトラブル
スタッフ間、患者さんの対応において、人間関係のトラブルが発生することがあります。
こういったトラブルに対して巻き込まれることもあったり、解決の道筋を示していかなければならない時があります。
経営数値のプレッシャー
薬局の経営に対する数値責任を負う場合があります。
売上や利益に対しての一部の責任を負う可能性があるため、誰よりも薬局の数字に関してのアンテナをはっておく必要があります。
周りからの評価が厳しくなる
管理薬剤師になると、薬局内スタッフ・患者さん・他職種からの期待と責任を負うことになります。
また、管理者としての役割に対する期待があるため、周囲からの評価がどうしても厳しくなりがちです。
管理者としての行動規範を身につけておく必要があります。
以上、主にデメリットについて説明してきましたが、先ほども触れましたが、デメリットと捉えるよりも『求められること』と捉えると良いかなと思います。
管理薬剤師はこれらのことに対して取り組んでいくからこそ、人として社会人として大きく成長していきます。
いずれ皆が通る道なので、先人の知恵を借りながら管理薬剤師を引き受けていくことをおすすめします。
最後に、先人の知恵となる薬局の管理者をしていく上でのおすすめの書籍を3つ紹介していきます。
管理薬剤師になる人向けのおすすめ書籍3選
管理薬剤師になる上でのメリット・デメリットを8つずつ挙げてきました。
デメリットはあるものの、それらのデメリットは乗り越えれば全て自分の成長に繋がっていき、明らかにあなたの市場価値の向上に繋がっていきます。
私は今まで管理薬剤師の研修も行ってきましたが、その中でも特におすすめの書籍を3冊紹介しておきます。
理想を言えば、これらの本を3回ずつ読んでください。
そうすると、あなたの管理薬剤師としてのマネジメント能力が劇的に上がっていくことを実感することができるでしょう。
マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則
まずは、ドラッカーの『マネジメント』です。
この本はぜひ読んでほしいです。
マネジメントの専門書で世界で一番読まれている本です。
管理薬剤師に対して、多くの人がマネジメントが重要と言いますが、そもそもマネジメントってどういうことかという普遍的な内容を学ぶことができます。
この本をおすすめする理由は下記の3つです。
- 経営の基礎知識とリーダーシップのスキルを身につけられる
- 目標設定(自分・部下)と顧客志向(患者さん)について学べる
- 業務の効率化やイノベーションについて学べる
もう少し詳しく説明すると、
①つ目は、『薬局の運営に必要なマネジメントとは?』という基本概念とスキルを習得することができます。
また、リーダーシップの役割と重要性が理解でき、薬局内で効果的なリーダーシップを発揮していくためのヒントがいっぱい詰まっています。
②つ目は、目標設定の仕方と、その達成に向けた戦略を学ぶことで、薬局の業績向上(数字だけではない)に役立つヒントを得られます。
また、顧客満足の重要性を理解でき、顧客志向の薬局サービス提供を行っていくための視点を養うことができます。
③つ目は、効率的な時間の管理の仕方、人・金・物の3つの資源の最適配分の方法を学べるので、業務の効率化に役立ちます。
また、社内(薬局内)の業務改善や新しいサービスの創造に役立つイノベーションの考え方を身につけることができます。
人を動かす
そして2冊目は、カーネギーの『人を動かす』です。
本の帯にも書いている通り、人が生きていく上で身につけるべき『人間関係の原則』を実例をもとに分かりやすく解説してくれています。
薬局という狭い空間内で良好な人間関係を構築していくうえで、この本はバイブルになる本だと思っています。
この本をおすすめする理由は下記の3つです。
- 良好なコミュニケーションと信頼関係の構築の手法を学べる
- モチベーションの向上やリーダーシップの発揮の仕方を学べる
- 対人問題の解決と良好な職場環境の構築に役立つ
もう少し詳しく説明すると、
①つ目は、信頼関係の構築、対人問題の解決に向けて、実践的な手法を学べます。
それによって患者さんや薬局内スタッフとの良好なコミュニケーションや、職場内の対人トラブルの改善をはかることができます。
②つ目は、他人のモチベーションを上げる方法とリーダーシップの基本原則を学べます。
その結果、スタッフの士気を高めたり、薬局内スタッフのチームを効果的・効率的に運営できる示唆を得ることができます。
③つ目は、薬局内の対人問題を効果的に解決したり、ポジティブなフィードバックを通じて職場の雰囲気を良くするのに役立ちます。
7つの習慣
そして3冊目は、7つの習慣です。
3つの書籍の中で、最も読み応えがあり、ページ数も多いですが、リーダーシップ論の世界的権威の著者が分かりやすく解説してくれています。
7つの習慣は、一言でいうとあなたの自己実現を支援してくれるための書籍であると言えます。
この本を最もおすすめする理由は下記の3つです。
- 自己管理と優先順位の明確化について学べる
- 効果的なコミュニケーションと信頼関係の構築について学べる
- 自己成長と継続的な改善について学べる
もう少し詳しく説明すると、
①つ目は、時間の管理の仕方や仕事の優先順位を明確にする方法を学べるので、効果的な自己管理を実現できようになります。
②つ目は、相手との信頼関係を築き、効果的なコミュニケーションを実現するためのスキルを学ぶことができます。
その結果、お互いが利益を得られるようなウィンウィンの関係を築く方法を学べます。
③つ目は、自分のキャリアアップのために継続的な自己成長を追求し、常に改善を続ける習慣を身につけることができます。
以上、管理薬剤師になっていくために必要な様々なスキルを身につけるために効果的な書籍を3つ紹介してきました。
先ほども紹介しましたが、これらの本を重要な部分には線を引きながら、3回くらい読んでいくと、
本の内容があなたのものになっていき、あなたのマネジメント力が劇的に上がっていくことを実感できます。
ぜひ、チャレンジしてみてください。
まとめ
今回は、薬局で勤務する薬剤師が管理薬剤師になるべきかどうかについて紹介してきました。
管理薬剤師になるメリットとデメリット(求められること)があり、それぞれ紹介していました。
紹介してきた通り、管理薬剤師になる際には、デメリットを上回るメリットがあるので、管理薬剤師は経験しておくことをおすすめします。
デメリットに関しては、その対処法として、私が研修でよく引用する3つの書籍を紹介しておきましたので参考にしてみてください。
管理薬剤師にはなりたくない…