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海外の薬剤師①|アメリカの薬剤師 現地レポ

いきなりですが質問です。

あなたの中で最も信頼できる職業って何ですか?

この質問を受けたらあなたはなんて答えますか?

きっと『医師』『弁護士』『先生』…と答える方が多いかもしれません。

『薬剤師』をすぐに思い浮かべる方って、あまりいないですよね?

実は、アメリカではかつて20年近くも『薬剤師』が最も信頼される職業のトップに立っていました。

それは、2001年9月11日までのことです。

そう、あなたもご存知のあの日、アメリカで同時多発テロが起きた日です。

この出来事をきっかけに、勇敢に救助活動にあたった消防士や看護師が称賛され、今では薬剤師が1位というわけではありませんが、それでも常にトップクラスの信頼度を誇っています。

でも、ちょっと考えてみてください。

同じ薬剤師という仕事でも、なぜアメリカと日本とではこんなに違うのでしょうか?

アメリカの薬剤師は国民から信頼されているのに、日本では医師や弁護士といった職業が先に浮かび、薬剤師がトップに入ることはほとんどありません。

私はこの点に長年疑問を抱いてきました。

日本もアメリカも薬剤師は同じ6年制の専門教育を受けているのに、どうしてこんなに差があるのか?

その答えを求めてアメリカに7回足を運び、ついにその理由がわかりました。

そこで今回は、『海外の薬剤師』をテーマに、私がアメリカで実際に見聞きしてきた体験を元にお話しします。

『なぜアメリカの薬剤師はこれほど信頼されているのか?』
『日本の薬剤師も、もっと信頼される存在になるにはどうすればいいのか?』

この2つの疑問を解き明かすべく、現地での体験を交えながら、3回にわたってお伝えしていきます。

読んでいただくことで、日本の薬剤師としてのキャリアを考えるヒントや新しい視点が見つかると思います。

【現地レポ】アメリカ研修(合計7回)

1996年から2019年まで、私は合計7回、アメリカ視察研修に参加してきました。

そもそもドラッグストアという業態はアメリカが発祥なので、日本のドラッグストアもアメリカから学ぶことが多いんですね。

日本のドラッグストア業界では、20年前のアメリカの薬局やドラッグストアの環境や形態が今の日本とよく似ているため、その成長や変化の流れを知ることが、日本での運営戦略を考える上で役立つとされています。

そのため、ドラッグストア各社はこぞってアメリカでの視察研修を行い、得たノウハウを日本市場に合わせた形でそのノウハウを取り入れてきました。

私も、その一環として7回のアメリカ視察研修に参加する機会に恵まれました。

その中で、ワシントン州立大学(シアトル)に短期間体験入学し、現地の薬学生がどんなことを学んでいるかを、大学の教授などから直接インタビューしてきました。

こうした経験を通じて、アメリカの薬局がどのように成長し、薬剤師がなぜ地域住民から信頼を得ているかを学んできました。

追って紹介しますが、その学びを日本の薬剤師の職能拡大やドラッグストア運営にどう活かせるかについても、多くのヒントを得ることができました。

私が視察してきたアメリカの主要都市について紹介します。

ロサンゼルス

私はロサンゼルスに6回訪れ、特に多くの店舗を視察してきました。

ロサンゼルスが選ばれる理由は、アクセスの良さや西海岸最大の都市であることもありますが、何よりも以下の点が魅力だからです。

ロサンゼルスの魅力
  • 多様な業態の店舗が豊富
    人口が多いロサンゼルスには、新しい業態の店舗が次々と展開されており、最新のビジネスモデルを学ぶ機会が多くある。
  • 観光スポットも充実
    ディズニーランドやハリウッド、ドジャースタジアム、エンゼルスタジアムなど有名な観光地がたくさんあり、視察と観光を兼ねて効率的に回れる。

ちなみに、今や世界的なスターとなった大谷翔平選手がエンゼルスに加入したばかりの頃も訪れました。

その当時、球場のグッズ売り場で店員さんに大谷選手のグッズについて聞いてみましたが、まだ販売されていなかったんです。

懐かしい思い出です。

また、後ほど詳しく紹介しますが、現地のドラッグストア「ウォルグリーン」で薬局長にインタビューした際、非常に印象的な場面を目にしました。

特にウォルグリーンの視察で得た発見は、日本のドラッグストアに活かせると感じたことが多かったです。

ラスベガス

ラスベガスには2回訪問しました。

ラスベガス周辺は人口増加が著しいため、新しい店舗がどんどん増えていて、ドラッグストア以外にも多様な業態の店舗を見学するチャンスが豊富にありました。

ラスベガスの魅力
  • 成長エリアの特徴
    人口増加によって、新規出店が活発な地域。
    最新の業態や店舗運営のトレンドを学ぶのに最適。
  • 視察のポイント
    ドラッグストアだけでなく、さまざまな業態が集まっており、幅広い視点での店舗視察が可能

また、後ほど詳しく紹介しますが、この訪問中にCVSファーマシーの『Minute Clinic』を実際に視察できました。

サンフランシスコ

サンフランシスコは2回訪問しました。

ロサンゼルスからもアクセスしやすく、視察先として非常に魅力的なエリアです。

サンフランシスコの魅力
  • 注目の店舗
    当時話題の『Amazon Go』の店舗を実際に見学でき、最新の無人店舗技術を学ぶ貴重な機会。
  • 観光地も充実
    ゴールデンゲートブリッジやケーブルカー、ピア39など観光名所が多く、視察と観光をうまく組み合わせて楽しめる。

最新の技術に触れながら、サンフランシスコの街並みや文化も堪能できた訪問でした。

シアトル

シアトルには、ワシントン州立大学での体験入学のために訪れました。

この街には有名なスポットもあり、印象的な体験がたくさんありました。

シアトルの魅力
  • スターバックス1号店
    シアトルには、スターバックスの1号店(写真左上)があり、現地の独特な雰囲気を感じられる。
  • 大学体験入学
    ワシントン州立大学に体験入学することができ(副学長との写真)、アメリカの薬学教育を直に体験することができた。

次回の記事では、このワシントン州立大学での体験入学についてさらに詳しくご紹介しますのでお楽しみに。

【現地レポ】アメリカのドラッグストア

当時のドラッグストア視察では、特に以下の2つの店舗に重点を置いて見学しました。

ウォルグリーン

この企業は、その理念である『The Pharmacy America Trusts(アメリカ国家に信頼される薬局を作り、地域の人々の健康に貢献する)』を基に、地域社会への貢献を大切にしています。

このウォルグリーンについては、以下の書籍でもさらに詳しく紹介されており、地域住民からどのようにして信頼を得てきたのか、その具体的な事例について学ぶことができます。

私がウォルグリーンを訪れた際、何度も薬剤師の方々にインタビューを行いましたが、どの薬剤師さんも笑顔でフレンドリーで、落ち着いた安心感のある接客をしており、その姿勢に感銘を受けました。

ウォルグリーンは、まさに地域住民から信頼される最も身近な医療提供施設なんだと感じました。

ウォルグリーンでのインタビューの内容は、このあと紹介していきます。

CVSファーマシー

CVSファーマシー(CVS Pharmacy)も、アメリカを代表するドラッグストアチェーンの一つで、処方薬の調剤・販売と一般用医薬品の提供に注力しています。

また、モバイルアプリやウェブサイトでの処方薬のリフィル処方や、薬の配達サービスを提供するなど、テクノロジーを活用したデジタル化を推進しています。

これにより患者の利便性を向上するサービスを展開しています。

他にもCVSは、『minute clinic』というクリニックを店舗内に設置し、簡易な診察、ワクチン接種、血圧や糖尿病の管理などのサービスも提供しています。

このサービスにより、患者は医師の診察が必要な軽症の症状や予防接種などを店舗で手軽に受けることができ、アクセスしやすい医療機関としての役割を果たしています。

【現地レポ】アメリカ薬剤師のインタビュー

アメリカの薬剤師が、2001年9月11日以前に約20年間も最も信頼される職業のトップにあったことは、冒頭でお話ししました。

そして、今でもアメリカの薬局は地域住民にとって、最も身近で信頼でき、コストパフォーマンスの良い医療機関として機能しています。

正直申しますと、私はこのことを本で読んで頭では理解はしていたものの、実際には半信半疑だったんですよね。

そんな中、アメリカ研修でウォルグリーンのファーマシーマネジャー(薬局長)にインタビューした時、今でも忘れられない衝撃的な出来事がありました。

以下のような場面がありました。

私が薬局長にインタビューをしている時に、高齢の女性が薬局長の横を通りかかった時でした。

アメリカ薬局長

こんにちは、○○さん。
今日は元気そうね。
前の薬を飲んで調子はどう?

患者さん

調子いいわよ。
いつもありがとね。

アメリカ薬局長

あのお薬は大切なお薬だから飲み忘れないようにね。

患者さん

ありがとう。

こんなやりとりの場面に私は遭遇しました。

そこで私は、『う〜ん、さすがだ。患者さんの名前と飲んでいる薬を把握している。でも日本の優秀な薬剤師さんも、50人位は患者さんの名前と飲んでいる薬を把握している』と思い薬剤師に話しかけました。

今のはあなたの顧客なの?

アメリカ薬局長

そうなの、あの患者さんは私の顧客なの。
私がここの店に異動になった時に、近くに引っ越してきたの。

患者さんが、引っ越してきたんですか…?

アメリカ薬局長

そうなの、引っ越してきたの。

ウォルグリーンの薬剤師さんに思わず聞き直しましたが、彼女は間違いなく「moved in(引っ越してきた)」と言っていました。

この時、私は驚きのあまり言葉を失いました。

『薬剤師の異動を追いかけて、患者さんがわざわざ引っ越してくるなんて、日本では考えられるだろうか?』

そのことを彼女はまるで普通のことのように軽く答えていたんです。

この出来事がきっかけで、私はアメリカの薬剤師がなぜこれほど信頼されているのか、そして日本とアメリカの薬剤師が同じ6年制にも関わらず、どこが違うのかという疑問が頭から離れなくなりました。

それから、アメリカの薬剤師についてもっと調べるようになりました。

その疑問の答えが、実はシアトルでのアメリカ研修中に明確になりました。

この話については、次回詳しくご紹介しますね。

次回予告

今回は、アメリカ研修と、アメリカのドラッグストアで働く薬剤師について、私の体験をもとにお伝えしました。

次回は、2008年にシアトルで行ったアメリカ研修について詳しく紹介します。

この研修中にも衝撃的な場面に遭遇し、シアトルでの体験が、その後の私の薬剤師教育に対する考え方を大きく変えるきっかけとなりました。

ぜひお楽しみに!