例えばあなたの薬局でもこういったクレームありますよね。
またあの患者さんからのクレーム、どうしよう…
ドクターから薬局の応対に関してクレームが来ている、どうしよう…
私たちが働く薬局での業務は、対人業務がメインなので、日常業務をしているとこんな感じで患者さんやドクターからクレームを頂くことがあります。
クレーム対応は誰もが避けたいけれど、この業界で働いていると避けては通れません。
そこで今回は、薬局薬剤師向けのリスクマネジメント(クレーム対応)について3回シリーズで研修を行なっていきます。
今回の3回の研修を受けていただくと、患者さんなどからのクレームに戸惑うことなく、冷静に応対することができるようになります。
まず初回の今回は、そもそもクレームはなぜ起きるかを明確にしたうえで、クレームを未然に防止しつつ、クレームの効果的な対応方法について解説していきます。
クレームが発生する5つの要因
クレーム対応の仕方をお話しする前に、
『そもそもクレームはなぜ起こるのか?』について深掘りし、まずはクレームの本質を探っていきましょう。
ここで実際に1分くらい考えてみてください。
クレームが発生する要因は様々ですが、
結論から申しますと、
クレームは、『相手からの要求』と言い換えることができます。
クレームを言っている相手は、その根底には『こうして欲しい』という気持ちがあり、その通りにいかないがために、相手はその要求を突き付けているのです。
私達にとってはクレームですが、相手にとっては要求を言っているという感じで、お互いの視点の違いで捉え方が異なっている現象とも言えます。
そしてまさにクレームが発生する瞬間は、患者さんと従業員の価値観、意識の差、要求レベルの違いが大きくなった時に相手からクレームを受けることになります。
クレームが発生する要因に対しては具体的には下記の5つがあります。
- 商品やサービスの欠陥(商品やサービスが金額に見合っていない)
- 応対のまずさ(クレーム対応の仕方そのものに問題)
- システム上の問題(会社・法律のルールの縛り)
- 相手の勘違い(きちんと伝わっていない)
- 悪意のあるクレーム(言いがかりなど)
クレームが発生する要因のほとんどはこの5つに集約されます。
これらの5つの要因に対しては、それぞれ対応方法が異なってきます。
クレームが発生した際には、まずはどこに問題があるのか、何が原因で発生しているのかを見極めた上で応対すると解決への糸口が見えてきます。
クレーム対応前の重要ポイント
クレームが発生している原因が判明したら、実際にクレーム対応をしていきます。
ここで非常に重要なことが1つあります。
それは、クレーム対応を始める前に、こちらに過失が有るか無いかをはっきりさせてから応対していくことです。
こちらに過失がある場合は、当然、クレームに対して真摯に受け止め、謝罪対応を行います。
一方、こちらに過失がないのにクレームが来た場合も、とにかく相手の怒りを鎮めるために謝罪対応をしていませんか?
時にはそういったことも必要ですが、クレームを鎮めるためにいつもとにかく謝っているだけでは問題は解決せず、むしろ相手はさらに要求をしてくる可能性もあります。
そこで、こちら側に過失がある場合、過失がない場合の対応方法について具体的に解説していきます。
こちらに過失がある事例とその対応
例えば処方箋調剤で、薬の取り違え・数の取り違い・量の取り違い、服薬指導・情報提供の不備などは薬剤師側に不備があるので全面的にこちらに過失があります。
こういった調剤行為に由来するものに関しては法律で薬剤師の仕事が規定されており、薬剤師側の責任になります。
- 薬の取り違え・数の取り違い・量の取り違い
→薬剤師法23条の2に抵触
処方箋どおりの薬を投薬することが義務 - 服薬指導・情報提供の不備
→薬剤師法25条の2に抵触
副作用の防止することなど情報提供を行う義務
→薬剤師法24条に抵触
処方箋に疑わしい点があれば疑義照会をする義務
そのときの患者さんに対し最善を尽くしていなければならない
こういったミスが発生した場合には、当然ながら、まずはその誤りに対して謝罪する必要があります。
その時には謝罪の仕方も重要になってきます。
こちらの謝罪の気持ちが相手に伝わらなければ、先ほど紹介してきたクレームの5つの要因の2つ目の『応対のまずさ』から、さらにクレームに繋がることになります。
謝罪は言葉だけでなく態度でも示すようにしましょう。
具体的言うと下図のような最敬礼をしながら謝罪を行います。
しかし、残念ながら実際の現場ではこれがなかなかできていません。
現場ではせいぜい敬礼しながら謝罪しているに留まっている場合が多いですね。
謝罪する時は必ず『最敬礼』で『本当に申し訳ございません』と気持ちを込めて謝罪するようにしましょう。
クレームがこじれていく事例では、こういった基本事項である一次対応が間違っている場合がほとんどです。
まずは、誠心誠意こちらが謝罪すれば、こちらに過失がある場合でも『次回から気をつけてね』といってもらえるケースを私はたくさん見てきました。
謝罪の仕方は非常に重要です。
もちろん最敬礼による謝罪は、こちらに過失がある場合のクレーム応対のスタートであって終わりではありません。
その後の対応は、こちらができることを精一杯行うようにしていきましょう。
こちらに過失がない事例とその対応
次は、こちらに過失がない事例の対応方法について解説していきます。
例えばこんなケースを想定してみましょう。
- お薬が足りない(確実にお渡ししているにも関わらず)
- 薬が効かないから返品・返金を要求してくる
- 期限切れの処方箋を何とか調剤して欲しい
こういった事例でクレームが来た場合は、あなたならどうしますか?
ちょっと1分ほど考えてみてください。
↓↓↓
これらは全て薬局(薬剤師)側に過失はないけれども、こういったことでクレームを言ってくる患者さんは一定比率で存在します。
特に最近は患者さんの権利意識が強くなっている傾向があることが影響し、過失があると言えない場合でも、患者さんがこういったことを強く要求してくるケースはよくあります。
強く要求されてしまうため、薬局側もそのことに屈してしまい、患者さんの要求に仕方がなく応じてしまうケースもあるのではないでしょうか。
薬局(薬剤師)側に過失がない場合、また過失があったけれども健康被害がない場合などでも過度な要求をしてくるケースが近年増加しているように思います。
そういった場合には、安易に要求を受け入れれば収まると考えるべきではありません。
こういったケースの場合には、法に従った応対も必要になってきます。
具体的な対応方法については、次回の薬局薬剤師のリスクマネジメント②|実践編(現場の3つの事例)で解説していきます。
まとめ
今回は、薬局薬剤師のリスクマネジメント(クレーム対応)の1回目、効果的なクレーム対応方法について紹介してきました。
クレームはそもそもなぜ起こるのかの5つの理由を知った上で未然に防止する応対をしつつ、
実際にクレームが起こった時の効果的な対応方法について解説してきました。
次回は、薬局薬剤師のリスクマネジメントの2回目、現場でよく起こる3つのクレーム事例の具体的な対応方法について紹介していきます。
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