あなたの薬局でこういった問題はありませんか?
新人薬剤師の育成に行き詰まっている…
毎日が同じ繰り返しでやる気がなくて困っている…
私たちが働く薬局では、こういった人材育成に関しての悩みは常に存在します。
『仕事は見て覚えるもの』
『とにかく動いてみて分からなかったら聞いて』
『やる気がないのは気合いが足りないから』
とこんな感じで人材育成をしていた時代もありましたが、それはもうひと昔の話になってきています。
今の時代は、人材育成に関しても戦略的に仕組み化し、積極的に推進していかなければ、なかなか人は育っていきません。
戦略的に人を育成していくためにも、人材育成スキルの1つとしてコーチングは現場では非常に重要になってきます。
そこで今回は、薬局薬剤師向けのコーチングについて3回シリーズで研修を行なっていきます。
今回の3回の研修を受けていただくと、人材育成の基本となとなるコーチングのスキルを身につけることができます。
まず初回の今回は、『コーチングとはそもそも何なのか?』を深掘りしつつ、効果的な指導法とそのメリットなどについて解説していきます。
目次
コーチングとは
そもそもコーチングってなに…?
まずはここから始めていきましょう。
コーチングとは簡単に説明すると、下記の通りです。
対象者の目標達成を支援するために、対話を重ねることを通して相手に気づきを与え、その結果、相手が自発的に考え、行動を促すためのコミュニケーション技法
ここでのポイントは、
コーチングはあくまで相手の目標達成の支援であって、その支援の仕方は、いかに相手に自発的に考えて行動してもらうかが焦点であることです。
もっと具体的に解説すると、下図のような感じです。
コーチは、一緒に目標達成の階段を登るのではなく、相手が目標達成の階段を登っていくのを脇について支援するようなイメージです。
コーチングは一見すると、相手の目標達成をサポートする外部的な役割に留まっており、当事者意識が希薄に思えるかもしれません。
しかしコーチングの過程では、相手がが抱える課題を共に理解するという当事者意識を持たないと、克服に向けた具体的なアクションを促すこともできません。
そのため、コーチはただの外部の観察者ではなく、相手の目標達成に対して深い関心と責任感を持ちながら関わっていくことになります。
コーチングで何ができるようになるか?
まずは『コーチングとは何か?』を紹介してきました。
では、今回の研修のテーマであるコーチングのスキルを身につけることで『何ができるようになるか?』について解説してきます。
主に下記の3つのことがコーチングのスキルを身につけることでできるようになります。
- 対話や質問を通じて相手に気づきを促し、自発的な行動を起こす支援をする指導手法
- メンバーが自ら考えて行動する能力を高めたり、モチベーションを上げたりし、仕事の成果に大きく関係する
- メンバー間の円滑なコミュニケーションを促し、チーム全体のパフォーマンスの向上にも大きく寄与する
こういったことができるようになると、
薬局内の人材育成にとどまらず、患者さんの服薬指導でのアドヒアランスの向上、プライベートでも子育てなどにもあらゆる場面で活用していくことができます。
では、コーチングのスキルについてもっと深掘りしていきます。
コーチングとティーチングの違い
コーチングのことを深掘りする際には、必ずティーチングとの違いを理解しておきましょう。
コーチングとティーチングは現場ではしばしば混同されています。
コーチングのスキルを解説していく前に、まずはこの2つのスキルの位置付けをしっかり把握しておきましょう。
結論から申しますと、コーチングとティーチングの違いは下記の通りです。
この2つの大きな違いは、『知識や能力を与える』か、『引き出す』かという点にあります。
つまり、一方では指導者が必要な知識やスキルを直接教えるのに対し、もう一方では、相手が自分の中にある力や答えを見つけられるようにサポートするという違いです。
コーチングは、相手が主人公なんですね。
この2つを比べて、コーチングが優れていて、ティーチングが劣っているということではなく、
それぞれの特性と、その場の状況に応じてコーチングとティーチングを使い分けていくことが重要です。
効果的な4つの指導法とそのメリット・デメリット
先ほど、コーチングとティーチングの違いについて紹介してきましたが、相手の指導方法は、実は他にもあります。
では具体的にどういった指導方法があるのか、主に4つの具体例を挙げていきます。
まずは下図をご覧ください。
これら4つの指導法に対して、この図を参考にしながらメリット・デメリットを紹介していきます。
コーチング
コーチングは、相手に問いかけて教育していく指導法です。
メリット・デメリットは下記の通りです。
- 相手が自発的に解決策を見つけるため、主体性が育まれる
- 目標達成を支援するため、相手の成長が期待できる
- 対話でアプローチするため、相手が自分の強みに気づきやすい
- 効果が出るまでに時間がかり、短期的な問題解決には不向き
- 相手の意欲が低ければ、成果が得られにくい
今回の研修では、このコーチングについて詳しく紹介していきます。
ティーチング
ティーチングは、相手に答えを提示して教育していく指導法です。
メリット・デメリットは下記の通りです。
- 教える側が知識やスキルを直接伝えるため、効率的に指導できる
- 短期間で特定の知識・スキルを習得するのに向いている
- 特定の知識・スキルの習得が確実
- 教えてもらう側が受け身になることが多く、主体性や創造性が育ちにくい
- 一方通行のコミュニケーションになることがある
- 教えてもらう側の個々のニーズやレベルに柔軟に対応できない
コンサルティング
コンサルティングは、相手に答えを提示して課題解決していく指導法です。
メリット・デメリットは下記の通りです。
- 専門家の知識や経験に基づいた具体的な解決策を得ることができる
- 業務の課題に直接的に対応するため、即効性のある成果が期待できる
- 明確な方向性やプランを提示してくれるので、効率的に問題解決ができる
- 専門家に依存しやすくなり、主体性や自発的な成長が育まれにくい
- 提案が必ずしも合致するとは限らず、実行段階で失敗する可能性がある
- 相手が関与している間のみ成果がある場合が多く、持続的な成長には繋がりにくい
カウンセリング
カウンセリングは、相手に問いかけて課題解決していく指導法です。
メリット・デメリットは下記の通りです。
- 相手が抱える心理的な問題・悩みに寄り添うことで感情的な支援ができる
- 相手自身が内面的な成長や自己理解を深めていくことができる
- ストレスや不安の軽減、心理的な問題の解決に向けてサポートできる
- 解決策を直接提供しないため、具体的な問題解決には適していない
- 問題の根本解決に時間がかかる場合がある
カウンセリングのスキルに関しては、このサイト内で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
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ここで紹介した4つの指導法は、どれが良くて・どれが悪いというものではありません。
今、自分はどの指導方法を使っているかを常に意識し、現場の状況を踏まえて最も効果的な指導方法を選択していくことが何よりも重要です。
まとめ
今回は、薬局薬剤師のコーチングの1回目、効果的な指導法とそのメリットについて紹介してきました。
『そもそもコーチングとは何か?』について解説し、現場で混同しやすいティーチングとの違いを解説してきました。
また、コーチングだけでなく、4つの指導方法についてのメリット・デメリットも紹介してきましたので、状況に応じて効果的な指導法を使い分けていきましょう。
次回は、薬局薬剤師のコーチングの2回目、コーチングの指導テクニックと実践方法について紹介していきます。
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