前回に引き続き、今回はシリーズ3回目の最終回です。
今回は、『信頼関係構築のコミュニケーション』を行なっていくうえでの7つの傾聴のスキルについて紹介していきます。
前回の復習
心理的信頼関係を構築するためのコミュニケーションスキルを3回シリーズで紹介してきました。
第1回目では、コンプライアンスの悪い患者さんに対して、具体的にどのようなスタンスで服薬指導していくかを事例を用いて解説してきました。
第2回目では、心理カウンセラーが実際に学んでいる心理的信頼関係を構築するためのコミュニケーションのスキルの1つである受容的態度について詳しく解説してきました。
そこで今回は、心理的信頼関係構築のためのもう一つのコミュニケーションスキルの『傾聴のスキル』について詳しく紹介していきます。
7つの傾聴のスキル
あなたに1つ質問です。
この3回シリーズで、私が使っている漢字の違いにお気づきでしたでしょうか?
心理的信頼関係構築のコミュニケーションのスキルについて紹介してきましたが、話を『聞く』の漢字を全て、『聴く』と書いてきました。
『聞く』と『聴く』の違いって…?
この言葉の違いは実は大きくて、『聞く』と『聴く』の違いは下記の通りです。
『聞く』には体を表す漢字が『耳』しか入っていませんが、『聴く』には、『耳』『目』『心』の3つの文字が入っています。
『漢字って上手く作られているな〜』とつくづく感心します。
そして『聴く』ことに傾聴のスキルの極意があります。
傾聴のスキルとは、相手の話をただ聞くのではなく、相手のことを深く理解・共感することを目的とした積極的な聴くスキルのことです。
つまり傾聴のスキルとは、結論から言うと、相手の話を耳だけで『聞く』のではなく、耳と目と心を使って積極的に聴いていくというスキルなのです。
そんな傾聴のスキルについて、具体的に7つ紹介していきます。
うなずき
実は私には人の話を聴く時のクセがありました。
それは相手の話を聴くときに、何度も首を上下に振ってしまうクセです。
相手の話を聴いているときに、『うん』『うん』『うん』…と何度も頭を縦に振ってうなずいて聴いていました。
この癖は、心理カウンセラーの先生によく注意されたのを今でも覚えています。
何度もうなずくと、相手は自分の話を軽く聴いている印象を受けるので、カウンセリングを行なっている時には注意しましょうと。
そして、うなずきは『ゆっくり1回』がポイントであることもその時に教わりました。
相手の話が一区切りするうなずきのタイミングで、ゆっくり頭を上下に1回に振ることで、
相手の話をしっかりと聴いているメッセージと、次の話を話しやすくなるように促すメッセージを同時に相手に伝えることができます。
- ゆっくり頭を上下に1回振る
あいづち
ここで紹介する『あいづち』は、先ほど紹介した『うなずき』とセットで行うと非常に効果的です。
『うなずき』は相手の話しの区切りごとにゆっくりと頭を上下に1回振りますが、そのタイミングに合わせて『あいづち』の言葉を発します。
あいずちには、『はい』『ええ』『うん』『それで』『なるほど』『そうなんですね』…など無数にありますが、声に出して相手に伝えるようにすることが重要です。
これに関しても私は昔、心理カウンセラーの先生に注意されたことを思い出します。
それは、『そうなんですか』という言葉をあいずちの言葉として使っていた際に、『そうなんですね』にしましょうと注意されました。
『そうなんですか』と『そうなんですね』の違いは…?
少し細かいと思いますが、この2つの違いは明らかにあります。
『そうなんですか』は、文末に『?』が入るイメージで相手に伝わり、相手の言っていることに疑問を感じている印象を与えてしまうかもしれないからです。
発音の仕方にもよりますが、『そうなんですか』ではなく、『そうなんですね』を使っていくようにしましょう。
また同じあいずちを何度も使ってしまうと、流れが単調になるので、組み合わせて使っていくように意識していきましょう。
- 『はい』『うん』『それで』『なるほど』『そうなんですね』などを組み合わせて使う
共感
こちらが発する言葉で先ほど紹介した『あいづち』以外にも、共感の言葉を相手に発すると効果的です。
共感の言葉を同情の言葉と混同してしまう人がいますが、この2つの意味合いは異なります。
共感と同情って何が違うの…?
共感と同情の違いは下記の通りです。
- 共感…相手の立場に立って状況を理解し、相手の感情を自分も一緒に感じること
- 同情…相手の困難や苦痛に対して、気の毒に思うこと
共感は相手の感情を自分も一緒に感じるスタンスで、立場に上下関係が無く対等であることです。
一方同情は、相手の感情は理解はしているが自分はそれを感じているのではなく、状況によってはやや上から目線になってしまう場合があります。
両者の違いを理解しながら共感の言葉を発していきましょう。
共感の言葉は本当にたくさんありますが、主に下記の分類があります。
- 悲しみ
- 困難な状況
- 喜び
- 成功
- 不安
- 心配
- 怒り
- いらだち
- 疲れ
- ストレス …など
インターネットで調べて頂ければ他にもたくさんありますが、共感の言葉はネガティブな表現ばかりではありません。
上記の赤文字で示したように、相手がポジティブな表現をしてきた時には、こちらも相手と同じように一緒に喜んであげることも重要です。
- 相手の感情を汲み取り、言葉で伝える
反復
あいづちを入れる同じタイミングで反復の言葉を発していきましょう。
反復とは、相手の言葉をそのまま繰り返して発していきます。
相手のどの言葉を反復すれば良いの?
一番簡単な反復は、相手の言った言葉の文末(言葉尻)をそのまま繰り返すことです。
これなら簡単で誰でもすぐにできます。
少し慣れてきたら、相手の伝えたい単語やフレーズに注目して、それを反復していくとより効果的です。
- 相手の言葉を繰り返す
要約
相手との話がひと段落したら、要約(相手の話をまとめて、整理して伝える)を入れていきましょう。
要約を行うのには下記の3つの目的があります。
- 相手の話していることを再確認できる
- 相手の話していることを自分がきちんと理解できているかを確認できる
- もし理解が間違えていたら修正できる
話の区切りに要約を入れることで、相手の言っていることをこちらも正しく理解できるようになるので、信頼関係構築の上で重要です。
- 相手の話をまとめて、整理して言葉で伝える
沈黙
カウンセリングの世界では『沈黙は金』と言われたりします。
沈黙…?
黙っている方が良いの…?
ここでいう沈黙は、次に自分が何を話すか考えるための沈黙ではなく、相手が何かを思い出そうとしていたり、自分の考えを整理したりするのに必要な時間を相手に与えるための沈黙です。
私達の日常会話は、一般的に相手の話している最後あたりに次に自分の言うことを頭で考えていたりします。
そうすると、どうしても話を最後まできちんと聴いてくれていない印象を相手に与えてしまいます。
話を確実に最後まで聞き切ってから、一息ついて(1秒)話すようにしましょう。
- 相手の話を聴ききって1秒待ってから話す
効果的な質問
傾聴の最後のスキルは効果的な質問です。
『効果的な質問』を行うためには、状況に応じて下記の2つの質問を使い分けることが重要です。
- クローズドクエッション…『Yes』『No』で答えられる質問
- オープンクエッション…相手が自由に答えられる質問
相手が話しにくそうな時や話し始めには、主にクローズドクエッションを用いて、相手に答えやすように(話し出しやすい)していきます。
一方、相手とのコミュニケーションが少し進んでくれば、オープンクエッションを用いて、話を深掘りしていきましょう。
今回のまとめ
今回は、薬剤師の信頼関係構築のコミュニケーション③(7つの傾聴のスキル)について紹介してきました。
3回シリーズで紹介してきた、相手と心理的信頼関係を構築していくためのコミュニケーションスキル。
ここで紹介してきた5つの受容的態度と7つの傾聴のスキルを身につけて、ぜひ相手と信頼関係を構築するコミュニケーションに繋げていって下さい。
スキルは使って訓練していかないと身に付きません。
ぜひ普段の日常の中に、ここで紹介してきた受容的態度と傾聴のスキルを意識して使っていってみて下さい。
今回は3回シリーズで『聴くスキル』について紹介してきましたが、このサイト内では、『話すスキル』についても2回シリーズで詳しく紹介しています。
『聴くスキル』と『話すスキル』を使いこなせると、あなたのコミュニケーションスキルは劇的に向上します。
良ければ参考にしてみて下さい。
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