患者さんだけでなく、一緒に働いている先輩社員や上司に、頼み事をしたり、依頼を断ったり、怒りを感じたときに、どのように伝えたら良いか困った経験ってありませんか?
そんな時、言いたいことを言えずに我慢して結局言えない。
あるいは、相手に伝えたのはいいけど、感情的になってしまい後味の悪い経験をした。
そういった経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。
今回の薬剤師スキルアップ講座では、『薬局薬剤師のための効果的なコミュニケーション術と伝え方』について2回シリーズで紹介していきます。
今回は1回目です。
これは、『アサーション』と言われるスキルで、このスキルを身につけると、自己表現力が身につき、言いにくいことをきちんと相手に伝えるスキルが身につくだけでなく、クレーム対応力なども上がり、あなたのコミュニケーション力がグンと上がります。
目次
アサーションの概要
皆さんは、『アサーション』という言葉を聞いたことがありますか?
『アサーション』とは、『さわやかな自己主張』とも言われ、自分だけでなく相手も大切にしながら、自分の気持ちや意見を正直に率直に、その場にふさわしく表現することです。
言葉で言うことは簡単なのですが、なかなかできません。
『コミュニケーションが苦手で…』と思っている人がいるかも知れませんが、
アサーションはスキルなので、コミュニケーションが苦手とか得意とかは関係無く、身に付ければ誰でも使うことができます。
この自己表現のスキル(アサーション)は、実は薬局薬剤師の現場では本当に頻繁に使います。
- お薬が足りないときの患者さんへの伝え方
- 待ち時間が長くなってイライラしている患者さんへの伝え方
- 薬の値段が高くなったときの伝え方
- 薬の返品を依頼されてお断りするときの伝え方
- 処方された薬が足りないと言われたときの伝え方
などなど、思いつくまま挙げてみましたが、他にもまだまだ薬局では、『困った〜』『どのように伝えたら良いのか?』と言う場面が本当にたくさんあります。
医療機関とはいえ、薬局も『人』を相手にする職業なので、こういったケースはどこの薬局でも起こりうることで避けて通れません。
では、こういった『言いにくい対応』について、どのように応対していくかを、薬局でよくある事例をもとに紹介していきます。
薬局でよくある3つのタイプの対応方法
ではまず、薬局で最も多い事例である『お薬が在庫していない・足りないとき』に、薬局で想定される3つの対応方法を紹介していきます。
自己主張型(攻撃的)の薬局の対応
こういった薬局は少ないと思うのですが、今の状況をダイレクトにそのまま患者さんに伝えていく方法ですね。
例えばこんな感じで、
『申し訳ございません。このお薬はうちには置いていないのでお薬をお渡しできません』
『お薬が無い=お薬をお渡しできない』という感じで、今の状況をそのまま相手に伝える方法です。
ドラえもんの登場キャラに例えると分かりやすいのですが、ズバリ!『ジャイアン』です。
ズバズバと意見を言って、相手に対して優位に立とうとする言い方ですね。
丁寧に言えば、患者さんが折れてくれるかも知れませんが、中には『そんなの困るから何とかして欲しい』『前もお薬が揃っていなくて今回も無いとはどうなっているの?』といったクレームに繋がる場合があります。
この自己主張型の薬局の対応では、相手に情報はきちんと伝わりますが、状況によっては相手を怒らせてしまう場合があるから注意が必要ですね。
非主張型(自己犠牲)の薬局の対応
私が今までの現場を見てきた経験になりますが、この非主張型の薬局の対応が一番多いかも知れません。
例えばこんな感じで、
『ご迷惑をお掛けし本当に申し訳ございません。うちの薬局にこのお薬は置いていなくて…』
少し極端に書きましたが、とにかく患者さんに謝って自己主張をあまりしない表現方法です。
謙虚さが美徳とされている日本人には、このタイプが多いかも知れません。
こちらは、ドラえもんの登場キャラに例えると、ズバリ!『のび太』です。
主張を控えめにして、曖昧にしたりする言い方ですね。
患者さんが迷惑を被っているのは確かのですが、薬局で全てのお薬を在庫することはとても不可能ですから、お薬の在庫がないのは100%薬局に落ち度があるわけでは無いですよね。
この場合も、患者さんによっては理解してくれる場合もありますが、こちらが100%悪いわけでもないのに謝罪しすぎると相手に『薬局が悪い!薬局のミスだ!』と勘違いさせてしまい、クレームに繋がってしまう可能性があります。
この非主張型の薬局の対応では、相手に謝罪の気持ちは伝わりますが、状況によっては相手に薬局のミスだと思い込まれ、これも相手を怒らせてしまう場合があるから注意が必要です。
アサーティブ(自他尊重)な薬局の対応
では最後に最も理想的な表現方法と言われるアサーションのスキルを使ったアサーティブな薬局の対応を見ていきましょう。
結論から書くとこういった表現方法です。
『○○様もご存知かも知れませんが、現在ジェネリック医薬品の流通が日本全国規模で発生している関係で、残念ながらご希望の医薬品も不足しておりまして、いつ薬局に入荷するか現時点では未定と医薬品卸から伺っています。』
『ただ今、お薬をすぐにお渡しできるように他の医薬品の切り替えを病院の先生に問い合わせをしたりなど、薬局でできる限りの対応をさせていただこうと考えています。対応策が整い次第、ご案内差し上げます。それまでのお時間、10分ほどお待ちいただけますか?お急ぎでしたら、外出していただいても構いませんし、こちらからお電話差し上げることも可能です。どちらがご都合よろしいでしょうか?』
今回はジェネリック医薬品の在庫が無い・足りないときを想定して作ってみました。
どんな印象ですか?
この表現方法は、アサーションのスキルを使ってコミュニケーションを組み立てています。
これもドラえもんの登場キャラに例えると分かりやすいのですが、ズバリ!『しずかちゃん』です。
相手への配慮(相手の気持ち)をしつつ、自分の気持ちも伝えるスタンスですね。
アサーションのスキルを身につければ、こういった会話パターンをどんな場面でも簡単に組み立てることができ、円滑にコミュニケーションを進めることができます。
今回のまとめと次回予告
今回は、薬局薬剤師のための効果的なコミュニケーション術と伝え方①について紹介してきました。
『アサーションとはどのようなコミュニケーションスキルなのか?』から始まり、薬局の店頭では、アサーションのスキルを使う場面が本当に多いことを紹介してきました。
また最も多いと思われる事例(お薬が在庫していないケース)を用いて、実際にアサーションのスキルを使って薬局でどのように対応するかも具体的に紹介してきました。
次回の2回目では、アサーションのスキルを使ってどのように表現方法を組み立てていくかについて具体的に紹介していきます。
『人に物を頼むとき』『相手の要求を断るとき』『相手の言動にイラッとしたとき』『相手の意見に同意できないとき』など、あなたが言いにくい場面でどのように表現していくかのスキルを具体的に紹介していきます。
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